薬学部生の自己PRの書き方|研究・実習・学業から自分の強みを見つける方法

執筆・編集:こさか先生公開日:最終更新日:

薬学部の就職活動で自己PRを書こうとすると、最初に困るのが自分の強みが分からないという問題です。

研究で大きな成果を出したわけではない。サークルの代表でもない。アルバイトも特別なことはしていない。

そう考えると、自己PRに書ける材料がないように感じるかもしれません。

しかし、自己PRは最初から「コミュニケーション力」「主体性」「粘り強さ」といった強みの名前を決める必要はありません。

むしろ、

自分が実際に経験したことを複数振り返り、そこで繰り返している行動を探す。

この順番の方が、自分の言葉で説明できる強みを見つけやすくなります。

私は、調剤薬局チェーンで人事部長として薬剤師の採用に携わってきました。

この記事では採用されやすそうな強みを選ぶ方法ではなく、研究・実務実習・学業・アルバイト等の経験から、自分の実際の行動をもとに自己PRを作る方法を整理します。

この記事でわかること
  • 自己PRと長所をどう分けて考えればよいか分かる
  • 強みが思いつかない状態から材料を探せる
  • 研究・実習・学業・アルバイトを自己PRの材料として整理できる
  • 複数の経験に共通する自分の行動を見つけられる
  • 5分で自己PRの骨組みを作れる

自己PRの設問・文字数・評価方法は応募先によって異なります。本記事は特定の企業・病院・薬局に共通する採用基準や、選考通過を保証する書き方を示すものではありません。実際の応募では、応募先の設問・指定字数等を確認してください。

目次

結論|自己PRは「強み」ではなく経験から考える

自己PRが書けないとき、最初に「私の強みは何だろう」と考え続けると手が止まりやすくなります。

そこで順番を逆にします。

STEP
経験を3つ程度思い出す

研究、実務実習、学業、アルバイト、サークル、日常生活などから、自分が実際に取り組んだことを挙げます。

STEP
自分がしたことを動詞で抜き出す

調べた、整理した、相談した、試した、続けた、説明した、見直したなど、自分の行動を書きます。

STEP
複数の経験に共通する行動を探す

場面が違っても繰り返している行動があれば、それが強みの候補になります。

STEP
強みに仮の名前を付ける

格好よい単語でなくても構いません。「情報を整理してから相談できる」「うまくいかないと方法を見直して続けられる」など、自分が説明できる言葉にします。

STEP
一番説明しやすい経験を根拠にする

強みが最も具体的に表れている経験を一つ選び、自己PRのエピソードとして使います。

大阪新卒応援ハローワークの自己PR資料でも、文章を書く前に学業・アルバイト・学生生活・資格勉強等の具体的な経験を思い出し、「いつもこうやっていた」という共通する力を見つける方法が紹介されています。

大阪新卒応援ハローワーク|自己PR(エントリーシート)編

自己PRとは?ESの中で何を伝える設問なのか

自己PRでは、自分の良いところを何個も並べればよいわけではありません。

大阪新卒応援ハローワークは、長所と自己PRについて、どちらも自分自身の良さを伝える点は共通するとしたうえで、自己PRを企業に活かせる自分自身の良いところとして整理しています。

大阪新卒応援ハローワーク|自己PRと長所の違いについて

ただし、これは応募先に合わせて自分にない性格を作るという意味ではありません。

自分が実際に持っている複数の良さの中から、今回の応募で伝えたいものを一つ選ぶと考えると分かりやすいです。

設問中心となる問い
自己PR自分にはどのような強みがあり、それがどの経験から分かるか
ガクチカ学生時代の一つの経験で、自分が何を考え何をしたか
志望動機なぜその仕事・業態・職場を志望するのか

ES全体での自己PR・ガクチカ・志望動機の役割分担は、薬学部生のエントリーシートの書き方で詳しく整理しています。

強みが思いつかないときは「3つの経験」を振り返る

経験を振り返るときは、最初から「自己PRに使えそうな立派な経験」だけを探さなくて構いません。

例えば、次のような範囲まで広げて考えます。

経験の種類思い出してみること
研究実験、文献検索、記録、研究室内の相談、発表準備等で工夫したこと
実務実習事前準備、患者対応、指摘を受けた後の修正、記録、質問の仕方等
学業苦手科目の学習方法、試験計画、復習方法、グループ学習等
アルバイト仕事の覚え方、周囲との連携、接客、ミス防止、業務改善等
課外活動サークル、部活動、委員会、ボランティア等での役割や工夫
日常生活長く続けていること、周囲からよく頼まれること、自分なりの習慣

大きな成果があったかどうかは、まだ考えなくて構いません。

まず、自分が実際に何をしたか思い出せる経験を3つ程度選びます。

経験から「自分がしたこと」だけを抜き出す

次に、経験のタイトルや結果ではなく、自分の行動だけを抜き出します。

このとき便利なのが、動詞で書くことです。

  • 調べた
  • 比べた
  • 整理した
  • 相談した
  • 質問した
  • 記録した
  • 試した
  • 続けた
  • 見直した
  • 説明した
  • 共有した

例えば、研究の経験について、

卒業研究を頑張った

だけでは自分の行動が分かりません。

一方で、

  • 実験結果を表に整理した
  • 条件の違いを比較した
  • 分からない部分を文献で調べた
  • 指導教員に相談する前に論点をまとめた

まで分けると、その人の行動が見えてきます。

自己PRの材料になるのは、肩書きよりこの部分です。

複数の経験に共通する行動が「強み」の候補になる

1つの経験だけを見て強みを決めると、エピソードに都合のよい言葉を後付けしやすくなります。

そこで、3つの経験を横に並べます。

経験自分がしたこと
研究結果を整理してから、論点をまとめて相談した
実習分からない点をメモし、自分なりに調べてから質問した
アルバイト新人が迷う作業を整理し、店長へ改善案を相談した

これは説明のための架空例です。

この3経験には、

一度情報を整理してから、人に相談する

という共通した行動があります。

ここから、例えば、

  • 情報を整理して周囲と相談できる
  • 考えをまとめてから協力を求められる

といった強みの仮ラベルを付けられます。

「協調性」「コミュニケーション能力」と一語に縮めてもよいですが、最初は自分が説明しやすい文章のままで構いません。

研究経験を自己PRに使うときは、研究テーマより自分の行動を見る

卒業研究・研究室での経験は自己PRの材料にできます。

ただし、研究テーマが難しいことや、珍しい研究であること自体が自己PRの強みになるとは限りません。

研究から探しやすいのは、例えば次のような行動です。

  • 実験条件を整理した
  • 文献を調べて仮説を考えた
  • 研究記録を継続した
  • 結果を比較し、次の方法を考えた
  • 教員・研究室メンバーへ相談した
  • 発表資料を相手に伝わるよう修正した

研究が順調だったか、失敗したかを無理にドラマにする必要はありません。

その研究の中で、自分がどのように動いていたかを振り返ります。

実務実習を自己PRに使うときは、業務説明で終わらせない

実務実習も自己PRの材料になり得ます。

ただし、

  • 服薬指導を経験した
  • 病棟業務を見学した
  • 調剤を行った

という業務内容だけでは、自分の強みはまだ分かりません。

例えば、

  • 指摘を受けた後、次回の準備方法を変えた
  • 患者に説明が伝わりにくかったため、言葉を整理した
  • 分からないことを記録して後から確認した
  • 自分の理解と指導内容の違いを整理して質問した

など、本人の行動へ戻します。

主体性を示すために、無理に「自分から提案した」経験を探す必要もありません。

丁寧に準備した、指摘を受けて修正した、記録を続けたという行動も、その人を理解する材料になります。

学業・試験勉強も自己PRの材料にしてよい

サークルやアルバイトをあまりしていない薬学生にとって、学業は大きな経験の一つです。

自己PRに使うときは、成績の良し悪しだけを見る必要はありません。

例えば、

  • 苦手科目の復習方法を変えた
  • 試験日から逆算して学習計画を作った
  • 理解できない部分を友人と説明し合った
  • 模試・試験結果から学習方法を見直した
  • 長期間継続するために学習量を調整した

といった行動を振り返れます。

「勉強を頑張りました」だけでは抽象的ですが、勉強を続けるために自分が何をしていたかまで具体化すると、自己PRの材料になります。

アルバイト・課外活動も、薬剤師業務へ無理に変換しなくてよい

アルバイト、サークル、部活動、ボランティア等の経験も使えます。

ここで注意したいのは、すべてを薬剤師業務へ無理に変換しないことです。

例えば飲食店のアルバイトだからOTC接客へつなぐ、塾講師だから服薬指導へつなぐ、と必ず結びつける必要はありません。

まずは、

  • 何を工夫したか
  • 困ったときにどう対応したか
  • 周囲とどう関わったか
  • 何を継続したか

を説明できれば十分です。

入職後の仕事との接点を書く場合も、実際に説明できる範囲で自然に添えます。

自己PRを1つの文章にする基本構造

強みと根拠にする経験が決まったら、文章にします。

大阪新卒応援ハローワークは、自己PRを理解しやすくする一例として、結論→エピソード→学びという流れを紹介しています。

薬学生が書く場合は、次の4つに分けると整理しやすいです。

要素書くこと
1.強み自分の強みを一文で示す
2.場面その強みが表れた経験を短く説明する
3.行動自分が具体的に何をしたかを書く
4.学び・現在その経験から分かったこと、現在も意識していること等を書く

必ずこの順番でなければならないわけではありません。

指定文字数が短ければ、場面説明をさらに縮める必要があります。

まず設問に答え、その根拠となる自分の行動が読み手に分かることを優先してください。

架空例|「粘り強さ」ではなく行動から文章を作る

説明のための架空例を一つ示します。

研究で実験結果が安定しなかった学生がいたとします。

最初から「私の強みは粘り強さです」と決めるのではなく、本人がしたことを抜き出します。

  • 実験条件を一覧にした
  • 過去の記録と文献を照合した
  • 考えた原因を整理して指導教員へ相談した
  • 条件を一つずつ変更して記録した

ここから、

うまくいかないときに情報を整理し、方法を変えながら検証を続けられる

という強みの候補が見つかります。

その後で、必要なら短く「粘り強く改善を続けられる」と名前を付けます。

この順番なら、強みの言葉と実際の経験が離れにくくなります。

5分ワーク|3つの経験から自分の強みを見つける

文章を書く前に、5分だけ使って自己PRの骨組みを作ります。

1分目|3つの経験を書く

経験具体的な場面
経験1               
経験2               
経験3               

研究・実習・学業に限定する必要はありません。

2分目|自分がしたことを動詞で書く

経験自分がしたこと
経験1               
経験2               
経験3               

「頑張った」ではなく、調べた、話した、比較した、続けた、見直したなど具体的な行動にします。

3分目|共通する行動に印を付ける

3つを見比べ、似た行動が2つ以上の経験に出ていないか探します。

例えば、

  • 毎回、最初に情報を整理している
  • 困ると一人で抱えず相談している
  • 結果を記録し、次の方法を変えている
  • 相手によって説明方法を変えている

などです。

4分目|強みに仮の名前を付ける

共通行動を一文にします。

共通する行動強みの仮ラベル
情報を整理してから相談する情報を整理し、周囲と協力して進められる
結果を記録して方法を変える振り返りながら改善を続けられる
相手に応じて説明を変える相手の理解に合わせて伝え方を工夫できる

上の表は例です。自分の言葉で書いてください。

5分目|根拠にする経験を1つ選ぶ

その強みが最も具体的に表れていて、自分で背景まで説明しやすい経験を一つ選びます。

これで、

  • 伝える強み
  • 根拠となる経験
  • 具体的な行動

がそろいます。

授業・キャリア支援で使う場合

学生に強み一覧から言葉を選ばせる前に、3つの経験とそこで取った行動を書いてもらうワークとして使えます。

評価するときは「主体性があるか」など一つの理想像へ合わせるのではなく、強みの言葉と実際の行動がつながっているか、本人が具体的に説明できるかを確認します。

伝わりにくくなりやすい自己PRの5パターン

自己PRを書いた後は、採用に受かる・落ちるではなく、読み手に人物像が伝わるかという観点で見直します。

伝わりにくくなる例見直すポイント
強みの名前だけ
「コミュニケーション能力があります」
その強みが分かる具体的行動を1つ入れる
経験の説明だけ
研究内容・実習業務の説明が続く
自分が何を考え、何をしたかへ戻る
強みを詰め込みすぎる今回伝える強みを1つに絞る
立派な言葉に言い換えすぎる面接でも自分で説明できる言葉へ戻す
強みとエピソードがつながらないその経験から本当にその強みが読み取れるか確認する

特に注意したいのは、強みを格好よく見せようとして、本人の実際の行動から離れてしまうことです。

面接で「なぜそう思うのですか」と聞かれても、自分の経験として説明できる言葉を使ってください。

薬学教育モデル・コア・カリキュラムの資質・能力は採用基準ではない

薬学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版には、薬剤師として求められる基本的な資質・能力として、コミュニケーション能力、多職種連携能力、科学的探究、問題解決能力等が示されています。

一方、文部科学省はこれらについて、薬剤師として生涯にわたって目標とする資質・能力であり、卒業時にそのまま修得済みであることを示す項目ではないと説明しています。

文部科学省|薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)

したがって、

コアカリにある能力名を選んで自己PRに書けば評価される

という使い方はしません。

大学での学びを振り返る視点として参考にすることはできますが、自己PRでは自分自身の実際の経験と行動を根拠にしてください。

大学のキャリア支援で、強みの伝わり方を確認する

自分一人で経験を振り返っても、強みの言葉がしっくりこないことがあります。

その場合、第三者に説明してみる方法があります。

薬学部でも、自己分析から応募書類・面接へつなげるキャリア支援が行われています。

新潟薬科大学では、4年次に自己分析を実施し、その結果を就活の自己PRに活用する支援を行っています。

新潟薬科大学|薬学部の就職支援メニュー

大阪医科薬科大学薬学部でも、4・5年次生向けに自己分析セミナー、履歴書・ES対策セミナーを分けて実施しています。

大阪医科薬科大学|薬学部・薬学研究科 進路・就職サポート

日本大学薬学部でも、自己分析、履歴書・ES作成等の講座に加え、キャリア・カウンセリング・ルームでES添削や就職相談を行っています。

日本大学薬学部|就職支援体制

大学外では、新卒応援ハローワークでもES・履歴書の作成支援や、自分の強みを一緒に探す支援を受けられます。

厚生労働省|新卒応援ハローワーク

添削を受けるときは、文章を代わりに作ってもらうことだけを目的にせず、自分が伝えたい強みが第三者にも同じように読めるかを確認すると使いやすいです。

採用実務を経験して感じること|強みの名前より具体的な行動を見る

ここからは、全国共通の採用基準ではなく、私が調剤薬局チェーンで薬剤師採用に携わった経験からの見方です。

自己PRを読むとき、私が確認しやすかったのは「主体性」「協調性」といった言葉そのものより、その言葉の根拠になる行動が書かれている文章でした。

例えば、

私にはコミュニケーション能力があります

だけでは、その学生がどのように人と関わるのかまでは分かりません。

一方で、

実習で説明が伝わらなかった際、指導薬剤師の助言を受けて説明する順番を変え、次回は患者さんの理解を確認しながら話した

と書かれていれば、本人の行動について質問できます。

そのため私は、強い言葉を作るより、面接でさらに聞かれても具体的に話せる経験を根拠にすることをおすすめします。

よくある質問

アルバイトやサークルをしていません。自己PRは書けますか?

書けます。研究、実務実習、授業、試験勉強、日常生活等も自分の経験です。まず複数の経験を書き出し、自分が何をしていたかを動詞で整理してみてください。繰り返している行動があれば、強みの候補になります。

研究がうまくいっていません。それでも自己PRに使えますか?

研究成果の大きさだけで自己PRの可否は決まりません。結果が安定しない中で何を記録したか、何を調べたか、どう相談したかなど、自分が実際に取った行動を振り返れます。無理に成功談へ変える必要はありません。

実務実習しか自己PRに使えそうな経験がありません。

実務実習を使って構いません。ただし「服薬指導を経験した」等の業務説明だけで終わらず、その場面で自分が何を準備し、どう考え、指摘後に何を変えたかまで整理してください。

強みが複数見つかった場合は、全部書いた方がよいですか?

一つの自己PR設問では、指定文字数との関係もあるため、伝えたい強みを一つに絞る方が整理しやすいことがあります。別の強みは他の設問や面接で使えるため、自己分析のメモとして残しておいてください。

自己PRは何文字で書けばよいですか?

応募先が指定する文字数に従ってください。200字、400字等さまざまな形式があるため、全国共通の最適文字数はありません。短い場合も、強み・根拠となる経験・自分の行動が読み取れるよう必要な情報を絞ります。

自己PRと志望動機で同じ経験を使ってもよいですか?

同じ経験を使うこと自体を避ける必要はありません。ただし設問の役割は違います。自己PRではその経験から分かる自分の強み、志望動機ではその経験が仕事・職場への関心にどうつながったかというように、焦点を分けてください。

まとめ|強みは「作る」のではなく経験から見つける

薬学部生の自己PRでは、最初から採用されやすそうな強みを選ぶ必要はありません。

まず、

  1. 研究・実習・学業・アルバイト等から3つ程度の経験を思い出す
  2. それぞれで自分がしたことを動詞で書く
  3. 複数の経験に共通する行動を探す
  4. その行動に自分の言葉で強みの名前を付ける
  5. 一番説明しやすい経験を根拠にして文章にする

という順番で考えてみてください。

研究で大きな成果を出したこと、実習で特別な提案をしたこと、アルバイトで売上を伸ばしたことが必須なのではありません。

自分は普段、どんな場面で、どのように考えて動いているのか。

そこから見つけた強みの方が、自分で説明しやすい自己PRになります。

強みを見つけたら、次はES全体の中で自己PR・ガクチカ・志望動機をどう配置するか整理してください。


次に必要な準備へ進んでください。

主な確認資料

各大学のキャリア支援内容、応募先のES設問・文字数等は変更される場合があります。公的・大学情報は2026年9月10日時点で確認しています。

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