薬学部生の就職先研究のやり方|薬局・病院・ドラッグストアを比較するポイント

執筆・編集:こさか先生公開日:最終更新日:

説明会へ行っても、どの薬局も同じように見える。病院のホームページを見ても、結局どこを比べればよいのか分からない。

薬学部生が就職活動を始めると、このような状態になることがあります。

研修が充実している。地域医療に貢献している。チーム医療に力を入れている。

どれも大切な情報ですが、応募先が発信している言葉を読むだけでは、自分にとってどこが違うのかまでは分からないことがあります。

私は、調剤薬局チェーンで新卒・中途の薬剤師採用や人事制度に携わり、人事責任者も経験しました。

採用側にいた経験からも、就職先研究は採用担当者に良く見せるためだけの作業ではないと考えています。

自分が卒業後に働く場所を、自分で比較して選ぶための情報収集として使う方が重要です。

この記事でわかること
  • 薬局・病院・ドラッグストアなどを比較するとき、最初に何を調べればよいか分かる
  • 公式サイト・募集要項、説明会、職場見学の役割を分けて情報収集できる
  • 仕事内容、教育、配属・異動、勤務体制、キャリアなどを同じ軸で比較できる
  • 5分の就職先研究シートで、候補先の違いと不足情報を整理できる
  • 調べた後に、数字の比較・質問・志望動機のどこへ進むべきか判断できる

採用条件や仕事内容は勤務先・年度によって異なります。本記事では特定の勤務先への就職を勧めず、学生自身が比較・判断するための情報収集方法を扱います。

目次

就職先研究は「受かるため」ではなく「選ぶため」に行う

企業研究や職場研究というと、志望動機を作るために会社の長所を探す作業だと思うかもしれません。

しかし、それだけではありません。

薬学部の大学公式キャリア支援でも、業界研究、仕事研究、企業研究、見学、インターンシップなどは、学生が自分の将来を考え、進路を選ぶためのキャリア教育として扱われています。

就職先研究で最初に考えたいのは、

この職場のどこを褒めれば採用されやすいか

ではなく、

自分が働く場所として判断するために、まだ何を知らないのか

です。

この考え方にすると、説明会や職場見学の見方も変わります。

就職先研究は「業種・仕事・個別の職場」の順に進める

まだ病院・薬局・ドラッグストアなどで迷っている段階と、同じ業態の中でAとBを比較している段階では、必要な情報が違います。

STEP
業種・働き方を知る

病院、調剤薬局、ドラッグストアなどで、薬剤師の役割や働き方にどのような違いがあるかを確認します。この段階では一つに決めなくても構いません。

STEP
仕事の中身を知る

同じ病院でも病棟業務や教育体制は異なり、同じ薬局でも店舗、在宅、OTC、教育などの特徴は異なります。業態名だけでなく、実際の仕事へ一段下ります。

STEP
個別の職場を比較する

仕事内容、教育、配属、異動、勤務体制、将来のキャリアなどを同じ軸で候補先へ当てはめます。ここで初めてAとBの違いが見えやすくなります。

就職先研究は、一社の魅力をできるだけ多く探すことではありません。

複数の候補を同じ軸に置き、違いを見つけることがポイントです。

2025年公表の薬学生調査から分かる「学生が確認したい情報」

就職先研究で何を確認すべきかを考える材料として、2025年に「薬学教育」で公表された薬学部5年生の調査があります。

この研究のアンケート自体は2024年3月11日から4月8日に実施され、全国の薬学部5年生を対象として379名の有効回答を分析しています。

就職先を決める際に重視する項目として、全体では次が上位でした。

重視した項目回答割合
自身のキャリア形成65.4%
仕事内容58.3%
教育制度55.9%

また、病院が発信する求人情報の量について、全体の48.3%が「少ない」と回答しました。

薬学教育|薬学部5年生を対象としたアンケート調査による病院の就職関連情報に関する課題の分析

この調査の読み方には注意が必要

有効回答379名に対し回答率は3.4%で、地域偏在も報告されています。またドラッグストア希望者は21名と少数でした。

そのため、全国の薬学生全体が必ず同じ項目を同じ順番で重視すると一般化するのではなく、仕事内容・教育・キャリアなども就職先研究の重要な確認軸になり得ることを考える材料として使います。

就職先研究で最初に確認したい6項目

候補先を調べ始めると、情報が多すぎて何から見ればよいか分からなくなることがあります。

最初は次の6項目に分けると整理しやすくなります。

確認軸主に見ること
仕事内容どのような業務を経験できるか
教育新人がどう学び、独り立ちしていくか
配属・異動どこで働く可能性があり、どう決まるか
勤務体制勤務時間帯、当直・夜勤、応援等の仕組み
職場・組織の特徴施設機能、店舗・病院の役割、対象患者等
キャリア数年後にどのような経験・役割へ進めるか

1.どのような仕事を経験できるか

最初に見るのは仕事内容です。

病院なら病棟、調剤、注射、DI、チーム医療など、薬局なら外来、在宅、OTC、健康相談など、実際にどのような業務へ関わる可能性があるかを確認します。

ただし「在宅あり」「病棟業務あり」という一語だけで終えず、新人がいつ頃、どの程度関われるのかまで分かると比較しやすくなります。

2.新人教育はどう設計されているか

研修制度あり、と書かれているだけでは内容は分かりません。

集合研修、現場教育、指導担当者、振り返り、独り立ちの考え方など、どのような流れで仕事を覚えるのかを確認します。

研修期間が長ければ良い、短ければ悪い、と一律には判断できません。

自分がどのように学ぶことになるのかを具体的に想像できるかを見る方が重要です。

3.配属・異動はどう決まるか

特に複数施設・複数店舗を持つ組織では、採用された場所と実際に働く場所が同じとは限りません。

希望地域、配属の決め方、異動範囲、転居の可能性などを確認します。

配属について詳しく考えたい場合は、新卒薬剤師の配属ガチャ問題|入社後の配属先はどう決まる?で整理しています。

4.勤務体制はどうなっているか

勤務する時間帯や体制も、実際の生活へ直結します。

病院なら当直・夜勤、薬局やドラッグストアなら開局・営業時間やシフトなど、業態によって確認する項目は変わります。

年間休日、残業、勤続などの数字そのものを比較したい場合は、別記事で詳しく扱います。

5.職場・組織にはどのような特徴があるか

施設・店舗の役割も確認します。

病院なら病院機能や診療領域、薬局なら立地、主な処方内容、在宅への関わり方などによって、経験できる仕事が変わります。

会社・法人全体の説明だけでなく、自分が実際に働く可能性がある現場へ少しずつ視点を下げてください。

6.自分のキャリアとどこで接点があるか

最後は自分側の話です。

将来のキャリアを完全に決めておく必要はありません。

ただ、

  • 患者さんとどのように関わりたいか
  • どのような業務を経験してみたいか
  • どのような環境なら学びやすそうか
  • 勤務地や生活との両立をどう考えるか

程度でも、自分の判断軸を持っておくと候補先を比べやすくなります。

公式サイト・募集要項では「確認できる事実」を集める

就職先研究の最初の情報源は、応募先が公開している公式情報です。

例えば次を確認します。

  • 募集職種
  • 勤務地・配属範囲
  • 主な業務
  • 教育・研修
  • 勤務体制
  • 採用条件
  • キャリアの例

ここで意識したいのが、事実とキャッチコピーを分けることです。

例えば「充実した教育制度」という言葉は、そのままでは比較できません。

実際に何日・何か月の研修があるのか、現場配属後は誰が指導するのか、どのような業務を順番に経験するのか。

比較できる事実へ分解していきます。

説明会は「公開情報で分からなかったこと」を確認する

説明会へ参加する前に、公式情報で分かったことと分からなかったことを分けておくと、聞く内容が明確になります。

例えば、

  • 研修制度は書かれているが、配属後の教育方法が分からない
  • 在宅に取り組んでいることは分かるが、新卒がどのように関わるか分からない
  • 勤務地は複数書かれているが、配属の決め方が分からない

といった形です。

公開情報をもう一度聞くのではなく、公開情報から一段深い部分を確認する。

これが説明会を就職先研究に使う一つの方法です。

具体的にどのような質問を準備するかは、薬学部生の逆質問|薬剤師の就活で聞くべき質問と職場の見極め方で詳しく整理しています。

職場見学では実際の仕事と働く環境を見る

職場見学は、採用担当者に熱意を見せるためだけに行うものではありません。

公式情報や説明会で聞いた仕事内容が、実際の現場でどのように行われているかを見る機会として使えます。

現在の薬学生向け病院見学・仕事体験でも、薬剤部や病棟の見学、薬剤師との交流、実際の業務や症例を題材としたプログラムなどが行われています。

見学時には、例えば次を確認します。

  • 薬剤師が実際にどこで働いているか
  • どのような業務を担当しているか
  • 新人が働いている場面を想像できるか
  • 設備や仕事の流れはどうなっているか
  • 公式情報や説明会で聞いた内容と実際の現場がどうつながっているか

短時間の見学だけで人間関係まで決めつけない

職場見学では雰囲気も気になると思います。

ただし、数十分から数時間の見学だけで、職場の人間関係や働きやすさを正確に判断できるとは限りません。

その日に見た場面を事実としてメモすることと、そこから自分が感じた印象は分けておきます。

事実として確認したこと自分が感じたこと
新人薬剤師と指導担当者が一緒に業務をしていた質問しやすそうに感じた
見学時間中は調剤室がかなり忙しかった自分が働く場合の業務量が気になった

この二つを分けるだけでも、見学後の振り返りがかなりしやすくなります。

病院は公開情報だけでは比較しにくい場合がある

病院就職を考えている学生は、特に情報不足を感じることがあります。

先ほど紹介した2025年公表の薬学部5年生調査では、病院が発信する求人情報の量を「少ない」と回答した学生が全体の48.3%でした。

病院のみを希望していた学生に限ると、その割合は65.8%でした。

この調査は回答率が低いため一般化には注意が必要ですが、病院について十分な比較情報を得にくい学生が一定数いたことは確認できます。

病院を調べる場合は、募集要項だけでなく、

  • 病院機能
  • 薬剤部の業務
  • 病棟への関わり方
  • 新人教育
  • 当直・夜勤
  • 専門領域やキャリア

などを自分で補っていく必要があります。

見学会や仕事体験がある場合は、公開情報で分からなかった部分を確認する機会として使ってください。

5分でできる「就職先研究シート」

ここまでの内容を、自分の候補先へ当てはめてみます。

5分で就職先を決める必要はありません。

候補先の違いと、まだ分からないことを見つけることが目的です。

確認項目候補A候補B
主な仕事内容          
新人教育          
配属の考え方          
異動・勤務地          
勤務体制          
数年後に経験できそうな仕事          
公式情報で確認できたこと          
説明会・見学で確認したこと          
自分が魅力を感じる点          
まだ分からないこと          

ワーク1|候補A・Bを同じ表に並べる

まず、今分かっている情報だけで埋めます。

空欄があっても構いません。

むしろ空欄が見つかることに意味があります。

ワーク2|まだ分からないことを見つける

次に、空欄や曖昧な項目へ印を付けます。

それが、次に公式情報・説明会・見学などで確認する項目です。

就職先研究では、全部知っていることより、自分が何をまだ知らないか分かっていることが大切です。

ワーク3|自分にとって重要な違いを1つ選ぶ

最後に、AとBの違いの中から、自分にとって特に重要だと思うものを1つ選びます。

教育かもしれません。仕事内容かもしれません。勤務地かもしれません。

ここでは他人の正解ではなく、自分がなぜその違いを重視するのかまで考えてみてください。

授業・キャリア支援で使う場合

学生がシートを埋めた後、「どの項目が空欄だったか」「AとBで最も違ったのは何か」「自分が一番重視したいのは何か」を振り返ると、次の情報収集や個別相談につなげやすくなります。

就職先研究で避けたい3つのこと

1.キャッチコピーだけで比較する

地域密着、教育充実、患者中心などの言葉は、そのままでは比較しにくい情報です。

具体的にどのような仕事・制度・仕組みを指しているのかまで確認します。

2.見学時の印象だけで全体を決める

一度の見学は大切な情報源ですが、その日に見た場面が職場全体を完全に表しているとは限りません。

公式情報、説明会、見学で得た情報を組み合わせて判断します。

3.事実と自分の印象を混ぜる

「研修が3か月ある」は確認できる事実です。

「教育が手厚そう」は、その事実を見た自分の印象です。

どちらも就職先選びの材料になりますが、分けてメモしておくと後から比較しやすくなります。

数字で比較するときは別の記事で深掘りする

就職先を調べると、初任給、年間休日、残業時間、勤続年数、薬剤師配置など、数字でも比べたくなります。

この記事では、それらの数値を詳しく評価しません。

数字を同じ条件で比較したい場合は、薬学生が就職先選びで確認したい5つの数字|元人事部長が比較方法を解説で整理しています。

質問したいことが見つかったら逆質問・面接対策へ進む

就職先研究をすると、「教育担当者はどう決まるのか」「配属希望はどのように扱われるのか」など、確認したいことが出てきます。

その段階になったら、質問の準備へ進みます。

薬学部生の逆質問|薬剤師の就活で聞くべき質問と職場の見極め方では、学生自身が職場を判断するための質問を整理しています。

調べた内容を志望動機へつなげる

候補先の違いが分かってきたら、その次に志望動機を考えます。

ここで初めて、

  • 自分は仕事で何を大切にしたいのか
  • 応募先にはどのような特徴があるのか
  • 両者はどこでつながっているのか

を整理します。

志望動機の作り方は、薬学部生の志望動機の書き方|なぜ薬剤師・なぜ業態・なぜその職場を整理するで詳しく解説しています。

よくある質問

何社・何施設くらい比較すればよいですか?

全国共通の正解はありません。まず2つ以上を同じ表に並べるだけでも、違いは見えやすくなります。候補が増えすぎた場合は、自分が重視する条件で一度絞ってから詳しく調べる方法もあります。

職場見学には必ず行った方がよいですか?

すべての応募先で見学が必須とは限りません。公式情報や説明会だけで必要な情報が十分に得られる場合もあります。一方、病院や実際の勤務現場など、公開情報だけでは働くイメージを持ちにくい場合は、見学できる機会が判断材料になることがあります。

病院と薬局を同じ表で比較してもよいですか?

業態が違うため仕事内容や勤務体制には違いがありますが、「自分が経験したい仕事」「教育」「勤務地」「キャリア」など共通する軸で比較することはできます。まず業態の違いを理解したうえで、自分が重視する項目を共通の物差しにしてください。

企業研究をすれば志望動機もそのまま完成しますか?

就職先研究は応募先の特徴を知る作業です。志望動機では、その特徴と自分の経験・価値観・将来像との接点まで整理する必要があります。調べた情報を並べるだけで志望動機にするのではなく、自分側の理由を加えてください。

まとめ|就職先研究は「違い」と「分からないこと」を見つける作業

薬学部生の就職先研究では、最初から最も良い会社・病院・薬局を決める必要はありません。

まず、

  • 仕事内容
  • 教育
  • 配属・異動
  • 勤務体制
  • 職場・組織の特徴
  • 将来のキャリア

を同じ軸で並べてみてください。

公式サイトで確認できること、説明会で確認したこと、見学で実際に見たこと、自分が感じたことも分けます。

すると、候補先の違いだけではなく、自分がまだ何を知らないのかも見えてきます。

その空欄を埋めていくことが、就職先研究です。

数字で比べたいなら数字の記事へ。質問したいことが見つかったら逆質問の記事へ。自分がなぜその職場を選ぶか整理したくなったら志望動機の記事へ。

就職先研究は、採用されるためだけではなく、自分が納得して進路を選ぶために使ってください。


次に確認したい内容へ進んでください。

主な確認資料

研究・大学のキャリア支援情報・見学プログラムは2026年9月10日に確認しています。応募先の採用情報やプログラム内容は変更されるため、実際の就職活動では最新の公式情報を確認してください。

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