薬局の加算の仕組みを中小企業診断士が解説|薬局の収益はどこから来るか

執筆・編集:こさか先生公開日:最終更新日:
この記事でわかること
  • 薬局の加算が、どのような体制・業務を評価する仕組みなのか
  • 2026年度の地域支援・医薬品供給対応体制加算1~5の点数と位置づけ
  • 薬学的有害事象等防止加算から見える対人業務の評価
  • 加算による増収と薬局の利益を同じものとして考えてはいけない理由
  • 薬学生が実習・企業研究で加算をどう見るとよいか

実務実習やアルバイトで調剤薬局に入ると、地域支援、在宅、連携強化など、さまざまな言葉を目にします。

その中でも分かりにくいのが、調剤報酬の加算です。

加算は単に薬局の売上を増やす仕組みではありません。一定の体制を整えたり、特定の業務を行ったり、実績を積み上げたりした薬局を、調剤報酬上で評価する仕組みです。

私は薬剤師・中小企業診断士として、調剤薬局チェーンで薬剤師採用・人事・経営企画に携わり、現在は調剤薬局を含む医療・介護事業者の経営支援にも関わっています。

薬局経営を見るとき、加算は確かに重要です。しかし、加算が多い薬局ほど利益が多い、加算が多い薬局ほど良い会社である、と単純に判断することはできません。

この記事では、まず厚生労働省の2026年度調剤報酬改定資料から制度上確認できる事実を整理します。その後、制度資料だけからは判断できない部分について、薬剤師・中小企業診断士として私が薬局を見る際の考え方を分けて説明します。

目次

加算を理解する前に|調剤報酬の全体像

加算の話に入る前に、調剤報酬全体の位置づけだけ確認しておきましょう。

厚生労働省の調剤医療費の統計では、調剤医療費を主に次のように分けて集計しています。

  • 技術料
  • 薬剤料
  • 特定保険医療材料料

直近の厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向~令和7年度版~」でも、この区分に基づいて全国の調剤医療費が集計されています。

厚生労働省|調剤医療費(電算処理分)の動向~令和7年度版~

ここで重要なのは、薬剤料も技術料も薬局にとっての収益に関係しますが、それ自体がそのまま利益ではないということです。

薬局には医薬品の仕入費用、薬剤師・事務職員等の給与費、賃借料、システム費用、設備費、水道光熱費など、さまざまな費用があります。

したがって、この記事では加算によって増える金額を説明するときも、基本的に増収として扱い、利益とは区別します。

薬局の売上・費用・利益そのものを詳しく知りたい方は、先に次の記事を読むと全体像がつかみやすくなります。

調剤薬局はどうやって利益を出す?薬学生向けに売上・費用・利益の仕組みを解説

調剤報酬そのものの基本構造を確認したい方は、こちらで詳しく整理しています。

調剤報酬の基本を30分で理解する|新卒薬剤師が知るべき薬局の収益構造

薬局の加算とは何か

調剤報酬は、国が定める点数に基づいて計算されます。

原則として1点=10円です。

その中で加算とは、一定の算定要件や施設基準などを満たした場合に、所定の点数へ上乗せして算定できる評価です。

ただし、加算には種類によって性格が異なります。

  • 薬局の体制を評価するもの
  • 地域医療への対応実績を評価するもの
  • 在宅医療への対応を評価するもの
  • 薬剤師が患者へ行った薬学的介入を評価するもの
  • 医療機関等との情報連携を評価するもの

したがって、加算を一括して考えるより、何をしたことに対して点数が付いているのかを見る方が理解しやすくなります。

2026年6月には令和8年度診療報酬改定が施行され、薬局についても多くの評価が見直されました。

厚生労働省は令和8年度改定の基本方針の中で、薬局に関して地域の医薬品供給拠点として求められる機能に応じた評価薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化を掲げています。

厚生労働省|令和8年度診療報酬改定説明資料等について

2026年の代表例① 地域支援・医薬品供給対応体制加算

薬局の体制を評価する代表的な加算として、2026年度に地域支援・医薬品供給対応体制加算が設けられました。

これは、従来の地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算を統合して新設されたものです。

厚生労働省は、地域での医薬品供給を通じた適切な医療提供体制の構築を促進する観点から、この評価を見直したと説明しています。

厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】

地域支援・医薬品供給対応体制加算1~5の点数

2026年度の点数は次のとおりです。

区分点数大まかな位置づけ
地域支援・医薬品供給対応体制加算127点一定の機能を有する薬局の体制を評価
地域支援・医薬品供給対応体制加算259点調剤基本料1を算定する薬局のうち、より高い要件等を満たす区分
地域支援・医薬品供給対応体制加算367点調剤基本料1を算定する薬局のうち、より高い要件等を満たす区分
地域支援・医薬品供給対応体制加算437点調剤基本料1以外を算定する薬局に設けられた区分
地域支援・医薬品供給対応体制加算559点調剤基本料1以外を算定する薬局に設けられた区分

実際の算定には、各区分に定められた施設基準、実績、届出等を満たす必要があります。

薬学生が制度の全要件を暗記する必要はありません。

まずは、地域医療や医薬品供給に必要な体制・実績を持つ薬局を、調剤報酬でも評価していると理解しておけば十分です。

67点は薬局の増収にどのくらい影響する?

加算の点数だけを見ても、金額の大きさはイメージしにくいかもしれません。

そこで、地域支援・医薬品供給対応体制加算3の67点を単純計算してみます。

仮定単純試算
1回の算定67点 × 10円 = 670円
対象となる処方箋が1日100枚670円 × 100枚 = 6万7,000円/日
月20日6万7,000円 × 20日 = 134万円/月
12か月134万円 × 12か月 = 1,608万円/年

数十点の差でも、算定回数が積み上がると年間の収益額には大きな差が生じ得ることが分かります。

この試算を見るときの注意点

上の1,608万円は、対象となる処方箋を1日100枚、月20日、12か月にわたって67点で算定できたと仮定した単純な増収試算です。

加算を算定・維持するためには、人員配置、医薬品在庫、地域連携、在宅対応、夜間休日を含む体制などが必要になる場合があります。

増えた1,608万円がそのまま利益として残るわけではありません。

中小企業診断士としては加算額と必要コストをセットで見る

ここからは、厚生労働省が示した評価基準ではなく、薬剤師・中小企業診断士として私が薬局経営を見る際の考え方です。

経営支援で加算を見る場合、私は加算による増収額だけを見ません。

  • その加算を算定するために何人の薬剤師が必要なのか
  • どのような在庫を持つ必要があるのか
  • 在宅や地域連携にどの程度の時間が必要なのか
  • システム・設備・教育にどの程度の費用が必要なのか
  • その体制を継続的に維持できるのか

まで合わせて確認します。

加算点数が高いことと、利益が多いことは別の問題です。

この点は、薬学生が就職先を見るときにも覚えておいてほしいところです。

2026年の代表例② 薬学的有害事象等防止加算

2026年度改定では、薬剤師による薬学的介入を評価する薬学的有害事象等防止加算も新設されました。

対象となるのは、調剤管理料を算定する患者のうち、処方医へ確認すべき点がある処方箋が交付された患者です。

薬剤服用歴や電子処方箋を利用した重複投薬の確認等に基づいて処方医へ照会し、その結果として処方内容が変更された場合などに評価されます。

主な区分点数
在宅患者に対し、処方箋交付前に処方医へ提案し、その提案が処方に反映された場合50点
在宅患者について照会等の結果、処方変更が行われた場合50点
かかりつけ薬剤師による照会の結果、処方変更が行われた場合50点
上記以外で、照会の結果として処方変更が行われた場合30点

厚生労働省|令和8年度調剤報酬・薬学的有害事象等防止加算

たとえば、患者が複数の医療機関から薬を処方されており、薬剤師が重複投薬などの問題に気づいたとします。

薬剤師が処方医へ照会し、その薬学的判断が処方変更につながった場合、その業務を調剤報酬上で評価する仕組みです。

令和8年度改定では、この加算だけでなく、残薬調整、かかりつけ薬剤師によるフォローアップ、在宅訪問、服用薬剤調整など、患者への継続的な薬学的管理に関する評価が複数見直されています。

厚生労働省が令和8年度改定で薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化を掲げていることとも整合する流れです。

ただし、ここから対人業務が多い薬剤師ほど年収が高い、採用市場で評価されるといったところまで直接結論づけることはできません。

診療報酬上の評価と、企業ごとの人事評価・給与制度は別だからです。

調剤報酬改定と薬剤師個人の給与の関係については、次の記事で制度上確認できることと運営者の見解を分けて詳しく整理しています。

調剤報酬改定は薬剤師の給料にどう影響する?2026年改定を薬局経営から解説

加算から分かること・加算だけでは分からないこと

加算を見ると、その薬局についてさまざまな情報を得られます。

しかし、加算だけで薬局のすべてを評価できるわけではありません。

加算から確認する手がかりになること加算だけでは判断できないこと
一定の施設基準を満たしているか薬局全体の利益が多いか
どのような機能を持つ薬局か財務状態が健全か
在宅・地域連携等の実績があるか新人教育が充実しているか
どのような薬剤師業務を行っているか職場が働きやすいか
診療報酬上、どの機能・業務が評価されているか薬剤師一人ひとりの能力が高いか

この区別は非常に重要です。

たとえば地域支援・医薬品供給対応体制加算を算定していれば、一定の体制や実績を満たしていることを確認する手がかりになります。

しかし、その事実だけから新人教育の質や離職率、経営の安定性まで判断することはできません。

薬学生向けに加算をどう捉えるか

私は薬学生へ説明するとき、加算を薬局がどの機能・業務を診療報酬上評価されているかを見る通知表の一部のように捉えると分かりやすいと考えています。

ただし、あくまで一部です。

加算だけで薬局の良し悪しを判断するのではなく、教育、配属、勤務体制、給与、財務、キャリアなどと組み合わせて見ることが重要です。

私は調剤報酬の点数表を政策の方向を見る材料としている

ここからは、厚生労働省がこのような評価方法を示しているという意味ではなく、薬剤師・中小企業診断士として制度を見る際の私自身の考え方です。

私は、調剤報酬の点数表を、国が薬局や薬剤師にどのような機能・業務を求めているかを読む一つの政策メッセージとして見ています。

点数が新設されたり、要件が見直されたりする背景には、その時点で医療提供体制に求められている課題があります。

2026年度改定であれば、薬局について、

  • 地域の医薬品供給拠点としての機能
  • 在宅医療への対応
  • 患者の薬物治療への薬学的介入
  • かかりつけ薬剤師としての継続的な関与
  • 医療機関等との連携

などが、改定項目から読み取れます。

薬学生が点数をすべて覚える必要はありません。

何に点数が付いているのかを見るだけでも、将来の薬剤師にどのような役割が求められているかを考える材料になります。

薬学生は実習・就活で加算をどう見るとよいか

では、この知識を薬学生が実際にどう使えばよいのでしょうか。

説明のため、就職活動中の6年生Fさんという架空の学生で考えてみます。

Fさんは複数の薬局を見学しました。

以前なら、

  • 初任給
  • 年間休日
  • 自宅からの距離
  • 会社の知名度

だけで比較していました。

しかし加算について知ったことで、薬局見学で次のようなことも確認できるようになりました。

  • 地域支援にどのように取り組んでいるか
  • 在宅医療をどの程度行っているか
  • 薬剤師が医師への疑義照会や処方提案にどのように関わっているか
  • 地域の医療機関・介護事業者等とどのように連携しているか
  • 新人薬剤師がそうした業務を経験できるのか

加算の算定状況は、薬局内の掲示や地方厚生局等が公開する届出受理情報などから確認できる場合があります。

ただ、就活で大切なのは加算名を暗記して質問することではありません。

たとえば見学時には、

薬局見学で聞いてみたい質問
  • 新人薬剤師はどのくらいの時期から在宅業務を経験しますか
  • 疑義照会や処方提案を行った事例を新人向けに共有する仕組みはありますか
  • 地域の医療機関や介護事業者との連携には、薬剤師がどのように関わっていますか
  • 地域支援に関する業務を新人薬剤師も経験できますか

と聞いた方が、実際の働き方を理解できます。

加算は、会社を点数で順位付けするためのものではありません。

その薬局がどのような機能を持ち、そこで自分がどのような薬剤師業務を経験できるのかを考える入口として使うのがおすすめです。

加算だけで就職先を決めてはいけない

ここまで加算について詳しく説明してきましたが、最後に最も大切なことをお伝えします。

算定している加算の種類や数だけで、就職先の良し悪しを判断しないでください。

薬局選びでは、少なくとも次のような情報も別に確認する必要があります。

  • 教育体制
  • 配属の決め方
  • 一人当たりの業務量
  • 休日・勤務時間
  • 給与・住宅支援等の待遇
  • 人員体制
  • 会社や薬局の経営状態
  • 自分が目指すキャリアとの相性

加算は、その中の一つの情報です。

ただし、初任給や休日だけでは見えない薬局が実際にどのような医療機能を担っているのかを知る手がかりになる点には、大きな価値があります。

よくある質問

薬局の売上は薬剤料と技術料のどちらが多いですか。

金額では薬剤料が大きな割合を占めています。厚生労働省の調剤医療費統計でも、薬剤料と技術料は分けて集計されています。ただし、薬剤料も技術料もそのまま利益ではありません。薬局の利益を見る場合は、医薬品等費、給与費、賃借料その他の費用も合わせて確認する必要があります。

調剤報酬の1点はいくらですか。

原則として1点10円です。たとえば67点なら670円です。ただし、点数がそのまま利益になるわけではありません。調剤報酬は国が定める公定価格で、2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定が現行制度です。

加算が多い薬局は良い薬局ですか。

一概には判断できません。加算の算定状況から、その薬局がどのような施設基準を満たし、どのような業務や地域医療機能を持っているかを知る手がかりにはなります。一方で、利益、財務状態、新人教育、働きやすさ、離職率などは加算だけでは分かりません。就職先を選ぶ際は他の情報と組み合わせて判断してください。

薬学生が加算の点数を覚える必要はありますか。

就職活動のためにすべての点数や施設基準を暗記する必要はありません。まずは、どのような薬局機能・薬剤師業務が調剤報酬上評価されているのかを理解することをおすすめします。興味のある薬局について、見学前に代表的な加算を確認する程度でも企業研究の材料になります。

まとめ|加算は薬局の機能を見る一つの手がかり

薬局の加算は、単なる売上の上乗せではありません。

一定の体制、地域医療への対応、在宅医療、患者への薬学的介入など、薬局や薬剤師が行うさまざまな機能・業務を調剤報酬上評価する仕組みです。

2026年度には、地域支援・医薬品供給対応体制加算や薬学的有害事象等防止加算などが新設・再編されました。

薬剤師の専門知識や薬学的介入の一部が、実際に診療報酬の点数として評価されていることが分かります。

一方で、加算が多い=利益が多い、良い薬局、働きやすい薬局とは限りません。

薬学生の皆さんには、加算を薬局の順位付けに使うのではなく、

  • この薬局はどのような医療機能を持っているのか
  • 薬剤師はどのような業務をしているのか
  • 新人の自分はどのような経験を積めるのか

を考える入口として使ってほしいと思います。

初任給や会社名だけでは分からない薬局の姿を、一つ多い角度から見ることができます。

この記事で確認した主な一次資料

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