参考書を読んだ直後は分かった気がするのに、翌日の問題では答えられない。解説を読めば理解できるのに、何も見ずに説明しようとすると言葉が出てこない。
薬剤師国家試験の勉強をしていると、このようなことは珍しくありません。
そこで考えたいのが、復習するときにもう一度読むだけでなく、一度何も見ずに思い出してみる時間を入れることです。
学習科学では、学習した内容を記憶から取り出そうとすることをRetrieval Practice(想起練習)と呼びます。
練習問題やクイズなどによって後の記憶保持が改善する現象は、Testing Effect(テスト効果)として長く研究されてきました。
ただし、この記事で「参考書を読むのは無意味」「アクティブリコールだけをすればよい」と主張するつもりはありません。
実際、研究を詳しく見ると、読み直しが有利になる条件もあります。
また、効果的な理解学習と比べると、想起練習の優位性はかなり小さくなるというメタ分析もあります。薬学生を直接対象とした研究にも、想起練習の利益が確認された研究と、明確な差が出なかった研究の両方があります。
この記事では、古典的なテスト効果研究から、教室での大規模メタ分析、医療教育、薬学生を直接対象とした研究まで確認し、薬剤師国家試験の勉強へどこまで応用できるか整理します。
読み終えるころには、次の判断ができる状態を目指します。
- 参考書を読む時間と、思い出す時間をどう分けるか
- 復習するとき最初に教材を見るべきか
- 一問一答・過去問・多肢選択式でも想起練習になるか
- 答えられなかったとき、いつ答えを見るべきか
- 正解した問題も再び思い出す必要があるか
- 過去問の答えを覚えるだけにならないために何を確認するか
最初に結論
薬剤師国家試験の勉強では、参考書を読むことをやめる必要はありません。初めて学ぶ内容は読み、理解する。その後は教材を閉じて一度自力で思い出し、正答を確認し、時間を空けて再び取り出す。この組み合わせが使いやすいと考えます。
この記事は、薬剤師国家試験に合格した薬剤師で、大学非常勤講師として試験対策講座を担当した経験を持つ運営者が、学習科学・医療教育・薬学教育の研究を確認して作成しています。
ただし、記事内で示す実践フローは薬剤師国家試験の公式な学習方法ではなく、研究知見を国家試験対策へ応用した提案です。
復習する時期の考え方は、薬剤師国家試験の復習タイミングの記事で詳しく整理しています。
想起練習・アクティブリコール・テスト効果は何が違う?
最初に用語を整理します。
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| Retrieval Practice/想起練習 | 学習した内容を、自分の記憶から取り出そうとする学習行動 |
| Active Recall/アクティブリコール | 一般的な勉強法の説明でよく使われる、想起練習に近い表現 |
| Practice Testing | 問題・クイズなどを使って想起する具体的な方法 |
| Testing Effect/テスト効果 | テストや想起を経験したことで、その後の保持が改善する現象 |
| Test-enhanced Learning | テストを評価だけでなく学習のために利用する考え方 |
ここでいうテストは、点数を付ける本番試験だけを意味しません。
例えば、参考書を閉じて「この薬の作用機序は何だったか」と考える。一問一答に答える。白紙に覚えている内容を書く。過去問を解く。
これらも、記憶から情報を取り出そうとするという意味では想起練習として利用できます。
読み直すより思い出すとはどういうこと?
想起練習研究でよく知られているのが、RoedigerとKarpickeの2006年研究です。
大学生が文章を学んだ後、同じ文章を繰り返し学習する条件と、教材を見ずに内容を思い出すテストを行う条件が比較されました。
興味深いのは、いつ測定するかによって結果が変わったことです。
| 最終テストまで | 結果の方向 |
|---|---|
| 5分 | 繰り返し学習の方が良好 |
| 2日 | 事前にテストした条件が良好 |
| 1週間 | 事前にテストした条件が良好 |
つまり、今すぐ答えられる状態を作ることと、数日後にも取り出せる状態を作ることは同じではありません。
しかも、この研究の想起テストには正答フィードバックがありませんでした。それでも遅延テストではテスト条件の利益が確認されています。
だからといって読み直しが無意味なのではない
この研究を「参考書を読むな」と解釈するのは適切ではありません。
そもそも、まだ知らない内容は最初に学ぶ必要があります。用語の意味や作用機序を知らないまま、何もないところから思い出すことはできません。
また、Roedigerらの研究でも5分後のテストでは繰り返し学習の方が良好でした。
国家試験対策へ落とすなら、
- まず読む・理解する
- 教材を閉じる
- 自分で思い出す
- できなかった部分をもう一度確認する
という役割分担で考えます。
一度正解した後も思い出すことに意味がある
一度問題を解けるようになると、もう覚えたから次へ進もうと考えたくなります。
KarpickeとRoedigerの2008年研究では、外国語語彙を一度正答した後に、引き続き再学習する条件と、引き続きテストする条件などが比較されました。
この実験では、正答できた後に繰り返し学習することは遅延再生を改善しませんでした。
一方、繰り返し取り出した条件では大きな利益が確認されました。
国家試験対策では、過去問で一度正解したことだけを理由に、重要な知識を永久に復習対象から外さない方がよいでしょう。
分散学習と復習タイミングの記事で確認した考え方と組み合わせ、時間を空けた後にも取り出せるか確認します。
想起練習は単純な丸暗記だけの方法ではない
薬剤師国家試験では、単語だけを覚えればよいわけではありません。
作用機序と副作用をつなげる。病態から治療薬を考える。問題文から必要な情報を選ぶ。
このように、理解や応用が必要になります。
そこで、想起練習は単純暗記にしか使えないのではないか、という疑問が出てきます。
KarpickeとBluntの2011年研究では、科学教育に近い文章を使い、想起練習とコンセプトマップによる学習などを比較しました。
想起練習の利益は、単純な事実を尋ねる問題だけでなく、理解や推論を必要とする問題にも認められました。
初見問題への応用にも一定の研究がある
さらにPanとRickardは2018年、想起練習による学習が別の問題へどこまでつながるかをメタ分析しました。
122実験、10,382人から得られた192の転移効果量を統合した結果、再提示だけの条件と比べた全体の転移効果はd=0.40でした。
異なるテスト形式、応用・推論問題、医療診断問題などでも転移が確認されましたが、その大きさは条件によって変化しました。
過去問を思い出せる=初見問題も解ける、ではありません。
想起した知識を別の問題へ使える可能性はありますが、応用は自動的に起こるわけではありません。
教室での222研究でもテスト効果は確認されている
実験室だけでなく、実際の授業ではどうでしょうか。
Yangらの2021年メタ分析では、222の独立研究、48,478人の学生データが統合されています。
教室で行われるクイズやテストは、全体として学習成績を改善し、効果量はg=0.499でした。
もちろん、この0.499という数値を薬剤師国家試験の点数へ変換することはできません。
重要なのは、テスト効果が心理学実験室だけでなく、実際の授業でも広く確認されていることです。
薬剤師国家試験が多肢選択式でも想起練習はできる
想起練習というと、何も見ずに白紙へ全部書かなければ効果がないように感じるかもしれません。
しかし、Yangらのメタ分析では、多肢選択式のようなRecognition形式と、自力で答えを出すRecall形式のどちらでも学習上の利益が確認されました。
つまり、多肢選択式だから学習にならないとはいえません。
薬剤師国家試験そのものが多肢選択式である以上、過去問や選択問題を使うことにも意味があります。
ただし、同じ過去問を繰り返していると、知識ではなく、この問題の答えは3番だったと選択肢の位置や文章を覚えることがあります。
そこで重要な問題については、選択肢を選んだ後に、
- なぜこれが正しいのか
- どの知識を使って判断したのか
- 条件が変われば答えも変わるか
まで自力で確認すると、単なる問題文記憶を見つけやすくなります。
誤った選択肢をどう処理するかは、答え合わせの後に「なぜ間違えたか」「どこへ戻れば修正できるか」まで確認することが重要です。
思い出した後は答えを確認した方がいい?
想起練習では、答えを見ないことそのものが目的ではありません。
分からなかったら正答を確認し、自分の記憶を修正する必要があります。
Yangらの2021年メタ分析では、正答フィードバックがある研究の効果量はg=0.537、ない研究はg=0.374で、フィードバックの有無は結果に関係していました。
一方、前述のRoedigerら2006年研究のように、フィードバックなしでもテスト効果が生じた研究はあります。
したがって、フィードバックがなければ想起練習は無意味、ということではありません。
それでも独学の国家試験対策では、間違った知識をそのまま残さないため、一度自力で答えた後に正答と根拠を確認する流れを基本とする方が使いやすいでしょう。
答え合わせ後は、正誤だけで終わらせず、誤答の原因と修正する知識まで確認してください。
想起練習がすべての勉強法より優れているわけではない
ここは重要です。
想起練習と、ただ読み直す勉強を比べれば、想起練習を支持する研究はかなりあります。
しかし、比較対象が、体系化する、関連づける、意味を考える、といった効果的な学習方法になれば話は変わります。
Gonçalvesらの2025年メタ分析では、想起練習と、学習効果が期待される精緻化学習を直接比較した44研究、142比較が対象となりました。
想起練習の全体的な優位はg=0.14と小さく、正答フィードバックを伴う場合には想起練習の優位が大きくなった一方、フィードバックがない比較では精緻化学習側が有利になりました。
想起練習は理解する代わりではありません。
理解・関連づけ・体系化をした知識を、必要なときに取り出せるようにする工程として使う方が、薬剤師国家試験には合っています。
医療専門職教育でも想起練習は研究されている
薬学に近い医療教育へ対象を絞っても、研究があります。
Trumbleらの2024年の系統的レビューでは、医療専門職教育の56研究、63実験が対象となり、そのうち43実験で分散学習または想起練習について比較条件より有意な利益が報告されました。
ただし、全63実験で同じ結果が出たわけではありません。学習内容、テスト形式、実施間隔、授業環境なども異なっています。
医療教育のRCTでは6か月後にも差が出た研究がある
Larsenらの2009年研究では、小児科・救急医学の研修医を対象として、繰り返しテストと繰り返し学習が比較されました。
約6か月後の最終テストでは、繰り返しテストとフィードバックを受けた条件が平均39%、繰り返し学習条件が26%で、13ポイントの差がありました。
これは医師の研修教育であり、薬学生や薬剤師国家試験へ13ポイントという数字をそのまま当てはめることはできません。
それでも、医療知識について、短期的な暗記ではなく数か月後の保持まで確認した研究として参考になります。
薬学生を直接対象にした研究ではどうだった?
ここからが薬学生向けの記事として特に重要です。
一般の学習科学や医学教育で有効だったからといって、薬学生でも必ず同じ結果になるとは限りません。
自己テストと答え合わせを使った薬学生の研究
Stewartらの2014年研究では、薬学生へオンライン自己テストが提供されました。
学生は試験範囲に対応した問題へ回答し、回答後すぐに採点と正答の修正を受けることができました。
自己テスト導入後、多くの試験期間で成績が高くなりました。
ただし、この研究は想起練習だけの効果を無作為に切り分けた研究ではありません。
そのため、自己テストが成績改善の唯一の原因だったと断定することはできません。
医薬品100種類の学習では分散した想起練習が有利だった
Terenyiらの2018年研究では、薬学生が100種類の医薬品の商品名・一般名を学習しました。
時間を空けてクイズを繰り返す条件は、集中練習やstudy-only条件より長期保持で良い結果を示しました。
薬学生そのものを対象に、取り出す練習と学習間隔を組み合わせた研究として重要です。
2019年の追加研究では、商品名・一般名を思い出す際に最初の3文字をヒントとして与えた条件で、長期保持がわずかに低下しました。
この結果だけでヒントは禁止とすることはできません。
ただし、復習時に最初から答えの大部分を見せるより、まず自力で取り出す機会を作るという考え方の材料になります。
一方、薬学生で明確な効果が出なかった研究もある
ここを省くと、薬学生向けの記事として研究を都合よく選ぶことになります。
Cokerらの2018年研究では、薬学部2~4年次学生を対象に、研究群へ1年間で7回のクイズを行いました。
全体では、反復テストによる知識保持の改善は確認されませんでした。
ただし4年生を除外した分析では、低成績群に利益が確認されています。
さらにAlexanderらの2024年研究では、薬学部2年生94人を、喘息薬物療法について2回想起する群、1回想起する群、想起しない群へ無作為に分けました。
6か月後の最終評価では、3群の成績に明確な差はありませんでした。
使用されたのは5問の多肢選択問題で、想起時期も2か月後・4か月後という設定でした。
したがって、この研究から想起練習は効かないと結論づけることもできません。
一方で、薬学生なら、どんな内容を、どんな形式で、どんな間隔でテストしても必ず保持が改善するわけではないことを示す重要な研究です。
薬学生研究まで含めた結論
想起練習を支持する研究はあります。しかし、薬学生での効果は一様ではありません。だからこそ、アクティブリコールをすればよいで終わらず、何を・いつ・どのように取り出すかを考える必要があります。
薬剤師国家試験では理解→閉じる→思い出す→確認で使う
ここまでの研究を国家試験対策へ落とし込むなら、次の流れが使いやすいと考えます。
| 段階 | 行うこと |
|---|---|
| 1.理解 | 参考書・講義・解説で内容を理解する |
| 2.閉じる | 教材・解説を一度見えない状態にする |
| 3.思い出す | 問題・問い・白紙などを使い、自力で答える |
| 4.確認 | 正答と根拠を確認する |
| 5.修正 | 間違えた知識や理解を修正する |
| 6.再想起 | 教材を閉じ、修正後にもう一度答える |
| 7.後日確認 | 時間を空け、別の日にも取り出せるか確認する |
この7段階が薬剤師国家試験受験者で直接比較され、最適な方法として証明されたわけではありません。
この記事で確認した学習科学、教室研究、医療教育、薬学教育の知見を、国家試験勉強へ使いやすい形にした提案です。
最初から全部思い出そうとしなくてよい
初めて勉強する範囲について、青本を閉じて章全体を白紙へ再現しようとしても、ほとんど答えられないことがあります。
それでは想起に時間がかかりすぎます。
最初は学習範囲を小さくします。
- 一つの作用機序
- 一つの疾患
- 一つの計算原理
- 一つの制度区分
程度を学んだ後に一度閉じ、何が残っているか確認します。
思い出せなければ答えを見てよい
想起練習は、答えが出るまで何十分も苦しむ方法ではありません。
自力で答えようとしたものの出てこない場合は、答えや解説を確認します。
重要なのは、確認して終わらせず、解説を閉じた後にもう一度自分で答え直すことです。
何秒考えるのが科学的に最適、という国家試験用の固定時間はありません。
薬剤師国家試験の科目ではどう使う?
想起練習は、全科目を同じ形式で行う必要はありません。
薬理|薬の名前だけではなく作用の流れを取り出す
薬理なら、薬の名称を見て適応を一つ答えるだけで終わらせず、例えば次の関係を自分でたどります。
作用点 → 作用 → 生体で起こる変化 → 適応 → 注意すべき副作用
詳しい覚え方は薬理の科目別記事で扱い、この記事では教材を見ずに関係を取り出すという学習原則までにとどめます。
病態・薬物治療|疾患名から検査・治療へつなげる
疾患名を見て治療薬だけを一つ答えるのではなく、病態、症状・検査、治療選択をどこまでつなげられるか確認します。
何も見ずに説明して詰まった場所が、その日の確認対象です。
物理・化学・生物|用語だけでなく条件や関係を取り出す
公式を見て数字を代入できることと、どの条件でその式を使うのか判断できることは同じではありません。
化学反応や生物学的経路でも、用語単独ではなく、前後の変化や条件を自分で再現します。
計算問題については、初学段階から想起だけで進めるより、模範的な解法を学ぶ工程も重要です。計算問題の学び方は別の記事で扱います。
衛生・法規|似た制度や基準を区別できるか確認する
暗記事項が多い範囲では、一問一答との相性がよい部分があります。
ただし、単語だけを独立して暗記すると似た制度や数値を混同しやすくなります。
一つ答えた後に、何と区別する必要があるのかまで確認すると、知識を整理しながら取り出せます。
日本の薬学生研究からも暗記だけにしないことが重要
日本の薬学教育研究でも、単純な暗記だけに寄せないことを考える材料があります。
2024年に「薬学教育」に掲載された研究では、薬学科2年生について、CBTや薬剤師国家試験を見据えた学習と、深く意味を考える学習方略の関係が検討されました。
研究では、基本的な想起問題から、思考力を要求する応用問題へ段階的に進むことや、体系的な意味理解を伴う学習の重要性が示唆されています。
この研究は想起練習と読み直しを直接比較したテスト効果研究ではありません。
それでも、薬剤師国家試験対策を、フラッシュカードで知識を大量に当てるだけにしないための重要な補助線になります。
想起練習で避けたい6つの使い方
1.参考書を一切読まず問題だけを解く
知らない内容は最初に学ぶ必要があります。
想起練習は、理解する工程を省略するための方法ではありません。
2.答えられないまま長時間考え続ける
思い出そうとする機会を作った後、分からなければ答えを確認します。
確認後に再び自力で答えられるかを見る方が重要です。
3.答え合わせをしない
想起そのものに利益が確認された研究はありますが、国家試験勉強では誤った知識を修正する必要があります。
まず答える。その後に正答と根拠を確認する。この順番を基本にします。
答え合わせでは、正解を読むだけでなく、自分の判断のどこがずれていたかまで確認します。
4.同じ過去問の答えの位置だけを覚える
何度も同じ問題を解くと、内容ではなく文章や選択肢の配置を覚えて正解できる場合があります。
その場合は、正解したことより、なぜその選択肢を選んだのかを確認します。
5.何でも自由記述にしなければならないと考える
教室研究のメタ分析では、多肢選択式のようなRecognition形式にもテスト効果が確認されています。
時間のかかる白紙再現だけに統一する必要はありません。
重要度や苦手度に応じて、一問一答、多肢選択、口頭説明、白紙再現などを使い分けます。
6.アクティブリコールだけで理解までできると考える
2025年のメタ分析や日本の薬学教育研究を踏まえても、意味理解・体系化・関連づけを想起練習だけで置き換えるのは適切ではありません。
理解する学習と、取り出す学習を組み合わせます。
よくある質問
- 参考書を読み返す勉強はやめた方がいいですか?
-
やめる必要はありません。初めて学ぶ内容や、理解が曖昧な部分は読む必要があります。想起練習は読むことをなくすのではなく、読んだ後に教材を閉じ、自分で取り出せるか確認するために使います。
- 全然思い出せない場合でも考え続けた方がいいですか?
-
長時間考え続ける必要はありません。一度自力で取り出そうとした後、分からなければ正答や解説を確認してください。その後、教材を閉じてもう一度答えられるか確認します。国家試験向けに必ず○秒考えるという最適時間は確立していません。
- 多肢選択式の過去問でもアクティブリコールになりますか?
-
なります。教室研究のメタ分析では、多肢選択式のようなRecognition形式にもテスト効果が確認されています。ただし、同じ過去問を何度も解いて答えの位置だけを覚えている場合は、必要な知識を取り出しているとは限りません。重要な問題では、選んだ理由まで説明できるか確認してください。
- 一問一答と白紙に書き出す方法はどちらがいいですか?
-
どちらか一方へ統一する必要はありません。一問一答は多くの知識を短時間で確認しやすく、白紙再現や口頭説明は手掛かりを減らして知識のつながりを確認しやすい方法です。学習内容、重要度、苦手度、使える時間に応じて使い分けます。
- 正解できた問題はもう復習しなくてよいですか?
-
一度の正解だけでは長期保持を判断できません。重要な知識は時間を空けた後にも再現できるか確認します。復習間隔の考え方は、忘却曲線・分散学習の記事で詳しく扱います。
- アクティブリコールを使えば薬剤師国家試験に合格しやすくなりますか?
-
想起練習には幅広い学習研究と医療教育研究がありますが、今回確認した範囲では、日本の薬剤師国家試験受験者を対象として、想起練習による合格率上昇を直接検証した比較試験は確認できませんでした。薬学生研究にも有意な利益が確認された研究と、差が確認されなかった研究があります。国家試験対策を支える一つの学習方法として利用するのが適切です。
まとめ|読むの次に思い出すを入れる
想起練習・テスト効果について、研究から確認できることを整理すると次のようになります。
- 教材を再読するだけでなく、記憶から取り出す練習には長期保持上の利益がある
- 教室環境の222研究・48,478人をまとめたメタ分析でもテスト効果が確認されている
- 多肢選択式でもテスト効果は生じ得る
- 正答確認を組み合わせる方法には合理性がある
- 単純暗記だけでなく、理解・推論・応用を扱った研究もある
- 医療専門職教育でも想起練習を支持する研究は多い
- 薬学生を直接対象にした研究にも肯定的な結果がある
- 一方、薬学生で明確な保持改善が確認されなかった研究もある
- 想起練習は、理解・体系化・関連づけをすべて代替する方法ではない
したがって、薬剤師国家試験では、
理解する → 教材を閉じる → 思い出す → 答えを確認する → 修正する → もう一度思い出す → 後日もう一度取り出す
という流れで使うのが一つの方法です。
読むことをやめるのではありません。
読んで終わらせない。
ここまでが想起練習の記事で扱う範囲です。
次に重要になるのは、問題を解いた後です。
間違えたら何を確認するのか。正解した問題の解説も読むのか。誤った選択肢をどこまで確認するのか。
問題演習後は、答え合わせと復習までを一つの学習として扱ってください。
この記事で確認した主な学術論文
- Roediger HL, Karpicke JD. Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science. 2006;17(3):249-255. PubMed
- Karpicke JD, Roediger HL. The critical importance of retrieval for learning. Science. 2008;319(5865):966-968. PubMed
- Karpicke JD, Blunt JR. Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping. Science. 2011;331(6018):772-775. PubMed
- Yang C, Luo L, Vadillo MA, Yu R, Shanks DR. Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin. 2021;147(4):399-435. PubMed
- Pan SC, Rickard TC. Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin. 2018;144(7):710-756. PubMed
- Gonçalves AO, Muniz BFB, Jaeger A. Retrieval Practice Versus Elaborative Encoding: A Systematic and Meta-analytic Review. Educational Psychology Review. 2025;37:100. 論文ページ
- Trumble E, Lodge J, Mandrusiak A, Forbes R. Systematic review of distributed practice and retrieval practice in health professions education. Advances in Health Sciences Education. 2024;29:689-714. 論文ページ
- Larsen DP, Butler AC, Roediger HL. Repeated testing improves long-term retention relative to repeated study: a randomised controlled trial. Medical Education. 2009;43(12):1174-1181. PubMed
- Stewart D, Panus P, Hagemeier N, Thigpen J, Brooks L. Pharmacy student self-testing as a predictor of examination performance. American Journal of Pharmaceutical Education. 2014;78(2):32. PubMed
- Terenyi J, Anksorus H, Persky AM. Impact of Spacing of Practice on Learning Brand Name and Generic Drugs. American Journal of Pharmaceutical Education. 2018;82(1):6179. 論文ページ
- Terenyi J, Anksorus H, Persky AM. Optimizing the Spacing of Retrieval Practice to Improve Pharmacy Students’ Learning of Drug Names. American Journal of Pharmaceutical Education. 2019;83(6):7029. 論文ページ
- Coker AO, et al. The effect of repeated testing of pharmacy calculations and drug knowledge to improve knowledge retention in pharmacy students. Currents in Pharmacy Teaching and Learning. 2018;10(12):1609-1615. PubMed
- Alexander KM, et al. Impact of frequency of spaced retrieval using repeat testing on asthma pharmacotherapy knowledge retention. Currents in Pharmacy Teaching and Learning. 2024;16(12):102172. PubMed
- 深い処理の学習方略の使用促進を目指した授業実践と縦断データを用いた学習方略,学修行動,試験成績の関連性の考察.薬学教育.2024;8:2024-040. 論文ページ
学習方法の効果は、学習内容、もともとの理解度、テスト形式、正答確認、反復回数、復習間隔などによって変化します。本記事では、単一研究の結果を薬剤師国家試験へそのまま一般化せず、一般教育・医療教育・薬学教育の複数の研究を照合したうえで、国家試験勉強へ応用できる範囲を整理しています。
