薬学部生の逆質問|薬剤師の就活で聞くべき質問と職場の見極め方

執筆・編集:こさか先生公開日:最終更新日:
この記事でわかること
  • 薬学部生が逆質問で確認したい内容を、教育・配属・働き方・定着・キャリアの5領域で整理できる
  • 面接前に公開情報で確認できることと、面接で初めて聞くべきことを分けられる
  • 採用担当者の回答を、数字の良し悪しではなく具体性・一貫性・確認姿勢から評価できる
  • 給与・残業・配属など聞きにくい項目を、失礼になりにくい形で確認できる
  • 採用経験者が、実際の逆質問で何を見ていたかという個人的な視点も確認できる

薬剤師の就職面接で、最後に何か質問はありますかと聞かれたとき、何を聞けばよいのでしょうか。

最初に結論です。

逆質問は、好印象を残すためだけの時間ではありません。入社前に不足している情報を集め、自分に合う職場かを判断するための時間です。

面接前に公開情報を調べ、それでも分からないことを逆質問で確認し、内定後には労働条件を書面で確認する。この3段階に分けると、質問の目的が整理しやすくなります。

段階 主な目的 確認方法
面接前公開情報で確認できることを先に調べる企業サイト、求人情報、しょくばらぼ等
面接・説明会公開情報だけでは分からない働き方を具体化する逆質問
内定後・契約時自分に適用される労働条件を確認する労働条件通知書等の書面

私は薬剤師として勤務し、調剤薬局チェーンで人事責任者として新卒薬剤師の採用にも関わってきました。

この記事では、厚生労働省が公開している職場情報の制度を基礎にしながら、採用実務で私がどのように逆質問を見ていたかという個人的な視点も分けて紹介します。

目次

逆質問の前に、公開情報で確認できることを先に調べる

逆質問で情報を集める前に、公開情報で確認できることは先に確認しておきましょう。

厚生労働省は、若者が応募先の労働環境や就労実態を理解したうえで就職先を選べるよう、平均勤続年数、研修の有無・内容などの職場情報を提供する仕組みを設けています。

厚生労働省|職場情報の提供制度

また、職場情報総合サイト しょくばらぼでは、企業の働き方や採用状況に関する情報を横断的に検索・比較できます。

掲載されている情報は企業によって異なりますが、平均残業時間、有給休暇、採用状況、能力開発など、面接前の企業研究に使える情報があります。

公開情報ですでに分かることをそのまま質問するより、そこから一段深掘りした方が、自分に必要な情報を得やすくなります。

採用側として私が見ていたこと

ここからは採用経験を踏まえた個人的な見方です。私が採用に関わった場では、逆質問があるかないかだけで合否を決めることはありませんでした。

一方、企業サイトや説明会で得た情報を踏まえて、その先の働き方を具体的に確認する質問が出ると、その学生が入社後の勤務像を考えながら就職先を選ぼうとしていることは会話から伝わりやすいと感じていました。

私なら、質問の難しさよりも、公開情報と自分の希望をつないで質問できているかを重視します。

薬学部生の逆質問は5つの領域で準備する

逆質問を何十個も暗記する必要はありません。

薬学生の就職先選びで重要な情報を、次の5領域に分けて準備すると整理しやすくなります。

領域 確認したいこと 質問例
教育新人教育、独り立ち、相談体制新卒の方は入社後、どのような流れで業務を習得しますか
配属勤務地、店舗、異動、希望の扱い新卒の配属先はどのような基準で決まりますか
働き方残業、休暇、勤務体制、一人勤務新卒配属候補の店舗では、勤務時間や残業にどのような違いがありますか
定着入社後の定着状況、退職理由の把握新卒入社後の定着状況について、公開できる範囲で教えていただけますか
キャリア評価、昇格、専門性、異動若手薬剤師はどのような基準で担当業務や役割が広がりますか

1.教育について聞く|研修名より独り立ちまでの流れを確認する

新卒薬剤師にとって、教育制度は重要な確認事項です。

ただし、研修制度がありますかという質問だけでは、制度名や回数しか分からないことがあります。

確認したいのは、入社後にどのような順序で仕事を覚え、どの時点から一人で担当するのかです。

  • 集合研修と店舗研修の期間
  • 指導担当者の有無
  • 調剤・鑑査・服薬指導を任される順序
  • 疑義照会など判断に迷った場合の相談先
  • 独り立ちを判断する基準
  • 定期面談や振り返りの仕組み

質問例は次のように具体化できます。

新卒で入社した場合、店舗配属から一人で基本業務を担当するまで、どのような教育の流れになりますか。

一人薬剤師・一人勤務の可能性がある場合は、新卒で一人薬剤師は大丈夫?調剤薬局の配属前に確認したい7項目も参考にしてください。

人事経験からの補足

私なら、研修期間が長いか短いかだけでは評価しません。重要なのは、会社が独り立ちの基準を説明できるかです。

同じ3か月研修でも、到達基準が明確な会社と、単に3か月経ったら現場へ任せる会社では意味が違います。期間より、何を確認して次の段階へ進めるのかを聞く方が、入社後の教育像をつかみやすいと考えています。

2.配属について聞く|希望が通るかより決め方を確認する

新卒採用では、募集時点で配属店舗が確定していない会社もあります。

この場合、希望店舗に配属してもらえますかと聞くだけでは、配属の実態が分かりにくいことがあります。

次のように、配属決定の考え方を確認します。

新卒の配属先は、本人の希望、人員状況、研修上の適性などをどのように考慮して決めていますか。

あわせて、希望勤務地を伝える時期、配属候補エリア、転居を伴う異動の可能性、配属後の異動制度、店舗ごとの勤務体制を確認すると、入社後の生活をイメージしやすくなります。

配属先の決まり方については、新卒薬剤師の配属ガチャ問題|入社後の配属先はどう決まる?で詳しく扱っています。

3.働き方について聞く|平均値だけでなく自分の配属候補を確認する

残業時間、休暇、勤務時間などは重要な労働条件です。

厚生労働省の職場情報総合サイトでは、企業によって勤務実態に関する情報を検索・比較できます。

職場情報総合サイト しょくばらぼ

公開情報を確認したうえで、逆質問では自分が配属される可能性のある職場まで具体化します。

全社の平均残業時間は確認しました。新卒が配属されることの多い店舗では、繁忙期を含めるとどの程度の勤務になることが多いでしょうか。

この聞き方なら、全社平均と店舗差を区別できます。

全社平均が短いから自分の配属先も短い、平均が長いからすべての店舗が長い、と一律に判断しないことが重要です。

4.定着について聞く|数字が出るかより範囲と定義を見る

新卒の定着状況も、就職先を考えるうえで参考になります。

ただし、定着率の数字だけで良い職場・悪い職場を判定することはできません。

例えば同じ定着率でも、新卒薬剤師だけを集計しているのか、全職種を含むのか、入社1年時点なのか3年時点なのか、対象人数が何人なのかによって意味が変わります。

新卒薬剤師の入社後の定着状況について、公開できる範囲で教えていただけますか。もし数字があれば、どの期間を対象にしたものかも伺いたいです。

採用側として数字の即答を重視しすぎない理由

以前の私は、数字を即答できる採用担当者は健全な企業である、という見方を強く持っていました。現在はそこまで単純には考えていません。

採用担当者がすべての数字を暗記しているとは限りません。担当範囲によっては、その場で正確に答えられない項目もあります。

私が今見るなら、数字を即答できるかより、どの範囲の数字なのかを説明できるか、分からないことを曖昧に作らず確認すると言えるか、後から示された数字と説明が一貫しているかを重視します。

分からないので確認して回答しますという姿勢は、それだけで悪い回答ではないと考えています。

5.キャリアについて聞く|役職名より評価の基準を確認する

将来のキャリアを確認するとき、管理薬剤師になれますか、何年で薬局長になれますかと役職名だけを聞くより、役割が広がる基準を聞く方が具体的です。

若手薬剤師は、どのような経験や評価を経て担当業務や役割が広がっていきますか。

評価項目、面談頻度、役割拡大の条件、管理薬剤師・薬局長への登用、専門領域や在宅等への挑戦、異動・本部職等のキャリアを確認します。

キャリアパスが複数あること自体を良い・悪いと判断するのではなく、自分が希望する方向と会社の制度が合うかを見ます。

逆質問の回答は5つの視点で評価する

逆質問では、欲しい数字が返ってきたかだけで評価しないことが大切です。

評価視点 見るポイント
具体性抽象論だけでなく、時期・対象・実例等まで説明されているか
範囲全社平均なのか、新卒なのか、店舗単位なのかが明確か
一貫性求人票・企業サイト・説明会・面接で説明が大きく食い違っていないか
確認姿勢分からない事項を推測で答えず、確認して回答する姿勢があるか
自分との適合回答内容が自分の希望条件と合うか

特に最後の自分との適合は重要です。

ある人にとって良い配属制度が、別の人にとっても良いとは限りません。全国転勤を前向きに考える人と、勤務地を重視する人では評価が変わります。

私なら回答内容より回答の作り方も見る

採用側にいた経験から、現在の私なら良い数字を出してくれる会社を探すというより、回答をどのように組み立てているかを見ます。

例えば残業時間を聞いたとき、月10時間ですとだけ答えるより、全社平均はこの程度ですが店舗差があり、新卒配属候補ではこの範囲ですと説明された方が、自分の勤務像を判断しやすくなります。

これは後者の会社が必ず良いという意味ではありません。私は、条件の範囲や例外まで説明できる回答の方が、就職判断に使える情報量が多いと考えています。

給与・福利厚生・残業を逆質問で聞いてもよい?

聞いてはいけない質問ではありません。

給与、勤務時間、休日などは就職先を決めるために必要な情報です。

ただし、公開情報で分かる内容を繰り返すのではなく、自分に適用される条件や制度の運用を確認する形にすると実用的です。

求人票では初任給を確認しました。入社後の昇給は、定期昇給と評価による昇給をどのように運用していますか。

年間休日数は確認しています。有給休暇について、新卒薬剤師はどのような時期から取得することが多いでしょうか。

労働契約を締結する際には、使用者は賃金、労働時間その他の労働条件を明示する必要があります。

厚生労働省|採用時の労働条件の明示

そのため、面接ですべてを確定させようとせず、面接では働き方を理解し、最終的な契約条件は内定後・契約時に書面でも確認します。

採用経験からの個人的見解

私なら、特に新卒採用においては待遇について質問すること自体を問題にはしません。むしろ、仕事内容や教育には全く関心を示さず待遇の質問だけで終わる場合と、仕事内容を理解したうえで必要な条件を確認する場合は分けて見ます。

就職は労働契約でもあります。自分にとって重要な条件を確認することは必要です。重要なのは質問を避けることではなく、公開情報を確認し、適切なタイミングで具体的に聞くことだと考えています。

特に質問はありませんと答えたら不利になる?

特に質問はありませんと答えたことだけで、必ず不採用になるとは言えません。

面接の中ですでに疑問が解消している場合もあります。

ただ、入社前に企業へ直接確認できる機会を一つ失うことにはなります。

準備としては、5領域から2~3個ずつ候補を作り、当日の説明で解消した質問を外していく方法がおすすめです。

本日のご説明で多くの点は理解できました。最後に一点、入社後の新人教育について確認してもよろしいでしょうか。

逆質問だけでブラック企業を見抜こうとしない

逆質問は重要ですが、5つの質問で危険な会社を確実に判定できるようなものではありません。

面接担当者の回答は一つの情報源です。企業公式サイト、求人票、しょくばらぼ等の公的職場情報、会社説明会、店舗見学、面接での説明、内定後に示される労働条件などと組み合わせます。

情報が食い違う場合は、どれが自分に適用される条件なのかを確認してください。

逆質問の目的は相手の弱点を暴くことではなく、入社前の情報不足を減らすことです。

薬学生の逆質問で避けたい3つのこと

公開情報だけで分かる内容をそのまま聞く

店舗数、事業内容、初任給など、公式サイトや求人票で確認できる情報は先に調べます。そのうえで運用や自分への適用を深掘りします。

回答を一つの数字だけで評価する

残業時間、定着率、有休取得率などは参考になりますが、集計対象と期間を確認しないと意味を取り違えることがあります。数字の大小だけでなく、範囲と定義を確認してください。

企業を試すための質問にする

質問の目的は採用担当者を困らせることではありません。自分の就職判断に必要な情報を得ることを優先します。

面接で自分が聞かれる質問は別の記事で準備する

本記事は、学生から会社へ聞く逆質問を扱う記事です。

志望動機、自己PR、他社選考状況など、会社から学生へ聞かれる質問への回答準備は、薬学部の就活面接で聞かれる質問と答え方で確認してください。

よくある質問

逆質問は何個準備すればよいですか。

面接当日に実際に聞くのは2~3問でも十分です。ただし説明の中で疑問が解消する可能性があるため、教育・配属・働き方・定着・キャリアの5領域から複数の候補を用意しておくと選びやすくなります。

給与や休日について逆質問してもよいですか。

聞いてはいけない質問ではありません。公開情報で確認できる内容は先に調べ、自分に適用される条件や制度の運用を具体的に確認してください。最終的な労働条件は、内定後・契約時の書面でも確認します。

採用担当者が数字を即答できなければ避けた方がよいですか。

一度即答できなかっただけで判断する必要はありません。担当者がすべての数字を把握しているとは限らないからです。どの範囲の情報なのかを説明できるか、分からない場合に確認して回答する姿勢があるか、後の説明と一貫しているかを確認してください。

定着率が高ければ良い薬局ですか。

定着率だけで良し悪しは判断できません。対象職種、集計期間、対象人数などによって数字の意味が変わります。自分が重視する教育、配属、働き方などの情報と合わせて判断してください。

特に質問はありませんと答えると落ちますか。

それだけで不採用になるとは言えません。ただ、企業へ直接確認できる機会を失うため、事前に複数の候補を準備しておくことをおすすめします。面接中に疑問が解消した場合は、その旨を伝えたうえで残った一点だけ確認する方法もあります。

逆質問でブラック企業を見抜けますか。

逆質問だけで確実に判定することはできません。企業サイト、求人票、しょくばらぼ、会社説明会、店舗見学、面接、内定後の労働条件など複数の情報を組み合わせてください。逆質問は、その情報不足を埋める手段の一つです。

一人薬剤師になる可能性は逆質問で確認できますか。

確認できます。単に一人薬剤師になりますかと聞くだけでなく、どの店舗・時間帯で一人勤務があるか、入社後いつから始まるか、教育・相談・応援体制がどうなっているかまで確認すると実態をつかみやすくなります。

まとめ|逆質問は企業を試す時間ではなく、入社後の情報不足を減らす時間

薬学部生の逆質問では、質問そのものを難しくする必要はありません。

  1. 面接前に公開情報を確認する
  2. 教育・配属・働き方・定着・キャリアの5領域から不足情報を聞く
  3. 回答は具体性・範囲・一貫性・確認姿勢・自分との適合で評価する
  4. 最終的な労働条件は内定後・契約時に書面でも確認する

採用経験を踏まえた私の考えでは、良い逆質問とは採用担当者をうならせる質問ではありません。

自分が入社後に働く姿を具体的にするための質問が、最も実用的です。

そのうえで、採用担当者がどの範囲まで具体的に説明できるか、分からないことを確認する姿勢があるか、他の公開情報と説明が一貫しているかを見てください。

自分が面接で聞かれる質問への回答準備は薬学部の就活面接で聞かれる質問と答え方、一人勤務について深く確認したい場合は新卒で一人薬剤師は大丈夫?も参考にしてください。


主な一次資料

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