薬の名前、作用機序、適応、副作用を覚えたはずなのに、問題になると知識同士がつながらない。
病態の用語は覚えているのに、なぜその症状が起こるのかを説明できない。
計算問題では解説を見れば分かるのに、少し条件が変わると、どの式を使えばよいのか分からなくなる。
このようなときに考えたいのが、答えを覚えるだけでなく、なぜそうなるのかを自分で説明する学習です。
学習研究では、自分自身に向けて理由や因果関係を説明することをSelf-explanation(自己説明)と呼びます。
例えばACE阻害薬について、空咳という副作用だけを覚えるのではなく、
ACEを阻害する → ブラジキニンの分解が低下する → ブラジキニンが増える → 空咳につながる
と、自分で関係を説明するような学習です。
ただし、国家試験のすべての知識について、何でもなぜ?と考えればよいわけではありません。
薬の一般名、法規の期限、個別の数値など、理由だけでは導きにくい内容もあります。また、まだほとんど知らない内容を無理に自分で説明しようとしても、正しい説明を作れないことがあります。
この記事では、自己説明研究の代表的な研究、64研究をまとめたメタ分析、医学教育で自己説明が有効だった研究と有効性が確認されなかった研究まで確認し、薬剤師国家試験のどこで使えばよいか整理します。
読み終えるころには、少なくとも次の判断ができる状態を目指します。
- 自己説明とは具体的に何をする勉強法なのか
- 薬理や病態で、どこまでなぜ?を説明するか
- 想起練習と自己説明をどう使い分けるか
- 計算問題の解説をどう読めばよいか
- 自己説明を使わない方がよい内容は何か
- 初めて学ぶ内容では何から始めるか
最初に結論
自己説明は、覚えた知識についてなぜそうなるのか、何と何がつながっているのかを自分で説明する学習です。薬剤師国家試験では、薬理・病態・薬物治療・生物・計算問題など、因果関係や原理を理解したい内容に使いやすいでしょう。一方、初めて学ぶ内容や、理由から導けない単純暗記まで自己説明だけで学ぼうとする必要はありません。
この記事は、薬剤師国家試験に合格した薬剤師で、大学非常勤講師として試験対策講座を担当した経験を持つ運営者が、学習科学・医学教育研究を確認して作成しています。
なお、今回確認した中核研究には、薬剤師国家試験受験者を対象として自己説明の効果を直接比較した研究はありません。一般学習研究・医学教育研究を国家試験対策へ応用している点には注意してください。
自己説明とはなぜそうなるのかを自分でつなぐ勉強法
自己説明という言葉だけを見ると、覚えたことを自分の言葉で長く話す勉強のように感じるかもしれません。
しかし、重要なのは説明の長さではありません。
2018年にBisraらが行ったメタ分析では、自己説明は、因果的なつながりや概念同士の関係について、学習者自身が推論を生成する活動として整理されています。
例えば、
| 単なる暗記 | 自己説明 |
|---|---|
| ACE阻害薬では空咳がある | なぜACEを阻害すると空咳につながるのか説明する |
| 心不全では浮腫が起こる | なぜ心機能低下が浮腫につながるのか説明する |
| この計算ではこの式を使う | なぜこの条件ではこの式を選ぶのか説明する |
という違いです。
自己説明で確認したいのは、知識の量ではなく、知識同士のつながりです。
知っていることを長く話せばよいわけではない
例えば降圧薬について、
降圧薬です。高血圧に使います。錠剤があります。
と知っている情報を並べても、因果関係を説明しているとは限りません。
自己説明では、
- なぜこの作用点を変えると血圧が下がるのか
- その作用から、どの副作用が考えられるのか
- この病態に、なぜこの薬を使うのか
のように、知識と知識の間を説明します。
解答例をどう読むかを調べた研究から自己説明研究は始まった
自己説明研究でよく知られているのが、Chiらの1989年研究です。
学生が力学問題の解答例を学習する様子を調べ、学習成果が良かった学生と、そうでなかった学生が解答例をどのように読んでいたかを比較しました。
学習成果が良かった学生は、単に解答手順を読んでいるだけではありませんでした。
- なぜこの手順を使うのか
- この操作はどの原理とつながるのか
- どの条件ならこの解き方を使えるのか
といった自己説明を多く生成し、解答例の手順を原理と結び付けていました。
ただし、この研究は自己説明をするよう無作為に指示した介入試験ではありません。
自己説明をしたから成績が良くなったと、この研究だけで因果関係を断定することはできません。
それでも、国家試験の計算問題や解答例を読むときに、答えまでの手順を丸暗記せず、各手順と原理を結び付けるという考え方には使えます。
文章を読むだけより自己説明を促した研究もある
Chiらは1994年に、自己説明を実際に促す研究も行っています。
8年生24人が人の循環器系について学習し、14人は文章の各部分を読んだ後に自己説明を行い、10人の対照群は同じ文章を2回読みました。
自己説明を促された群では、事前テストから事後テストへの伸びが大きく、複雑な問いへの回答や循環器系の理解にも違いがみられました。
この研究は中学生を対象とした小規模研究であり、薬学生へそのまま一般化できるものではありません。
一方で、循環器系のように、
原因 → 生体内の変化 → 次の変化 → 結果
という因果関係を理解する内容で自己説明が研究されている点は、薬理・病態を学ぶうえでも参考になります。
64研究をまとめたメタ分析でも自己説明を支持
個別研究だけではなく、自己説明研究全体をまとめた分析もあります。
Bisraらの2018年メタ分析では、64の研究報告から69の効果量を統合しました。
その結果、自己説明を促した場合の全体的な効果量として、g=0.55が報告されています。
対象となった学習には、
- 問題を解く
- 解答例を学習する
- 文章を学習する
など複数の形式が含まれています。
g=0.55を薬剤師国家試験の効果量として読むことはできません。
重要なのは、なぜ?や、どうつながる?を自分で生成する学習が、特定の一研究だけでなく複数分野で研究されていることです。
自己説明は薬剤師国家試験のどんな内容に向いている?
自己説明は、すべての暗記事項へ同じように使う必要はありません。
特に使いやすいのは、原因と結果、原理と手順をつなげられる内容です。
薬理|作用点から適応・副作用までつなげる
薬理では、薬の名称と作用を別々に覚えるだけでなく、流れを説明します。
例えば、
作用点 → 作用 → 生体で起きる変化 → 適応・副作用
という順番です。
ACE阻害薬なら、
- 何を阻害するのか
- 阻害した結果、何が増減するのか
- それが血圧へどう影響するのか
- 副作用とどうつながるのか
を自分で説明します。
「ACE阻害薬=空咳」という組み合わせを捨てるのではなく、丸暗記した知識へ理由を追加するというイメージです。
病態・薬物治療|病態から症状・検査・治療をつなげる
病態・薬物治療では、疾患名と治療薬を直接結び付けるだけでなく、間にある理由を説明します。
病態 → 症状・検査値 → 治療目標 → 薬物選択
という流れです。
例えば、なぜこの症状が起きるのか。なぜこの検査値が変化するのか。なぜこの治療が選ばれるのか、と問いを置きます。
ただし、病態生理を説明すればすべての症例問題へ対応できると確認されているわけではありません。後ほど医学教育研究でも確認します。
物理・薬剤・計算問題|なぜこの式や手順を使うか説明する
計算問題では、解法を覚えて同じ数字へ当てはめるだけだと、条件が少し変わったときに止まることがあります。
解答例を読むときに、
- なぜこの式を使うのか
- この変数は何を意味するのか
- なぜこの単位へ変換するのか
- この条件が変われば式も変わるのか
を確認します。
これはChiら1989年研究で、学習成果が良かった学生が解答例の手順を原理と結び付けていたことともつながります。
単純な名称・数値暗記まで全部なぜ?で処理しなくてよい
一方、理由を考えても答えを導けない内容があります。
- 薬の一般名そのもの
- 固有名詞
- 法規上の期限
- 個別に定められた数値
- 任意的な分類
などです。
こうした内容まで無理になぜ?で説明する必要はありません。
理由から導けない知識は、想起練習・分散学習・一問一答など別の方法を組み合わせます。
医学教育でも自己説明は研究されている
薬学生を直接対象とした質の高い自己説明介入研究は、今回確認した主要研究では十分ではありませんでした。
一方、医学教育では臨床推論や病態生理を対象に複数の研究があります。
比較的なじみの薄い症例で自己説明の利益が出た研究
Chamberlandらの2011年研究では、3年次医学生36人が臨床症例を、自己説明しながら解く群と、通常通り解く群に分けられました。
1週間後に、同じ疾患領域のより難しい別症例へ取り組みました。
結果として、自己説明の利益はすべての題材で確認されたわけではありません。
学生にとって比較的なじみの薄いトピックでは自己説明群の診断成績が良好でしたが、なじみのあるトピックでは同様の利益は確認されませんでした。
ただし、これは知識がほとんどない初心者ほど自己説明がよい、という意味ではありません。
対象はすでに医学教育を受けている3年次医学生であり、比較的なじみが薄い症例についての結果です。
模範例と具体的な問いを組み合わせた研究
自己説明をするとき、何を説明すればよいのか分からないことがあります。
Chamberlandらの2015年研究では、3年次医学生54人が最初に臨床症例について自己説明を行った後、
- 研修医による自己説明の例+具体的な問い
- 研修医による自己説明の例のみ
- 別の課題
を経験しました。
1週間後、自己説明例と具体的な問いを組み合わせた群は、異なる症例で対照群より良い診断成績を示しました。
この研究は自己説明あり・なしを単純に比較した研究ではありません。
しかし、自由に説明してみようとだけ指示するより、説明例や具体的な問いを用意するという学習設計を考える材料になります。
病態生理を説明してもすべての症例で良くなったわけではない
自己説明を過大評価しないために、効果が確認されなかった研究も重要です。
Peixotoらの2017年研究では、4年次医学生39人が、臨床症例の所見について病態生理学的な機序を自己説明する群と、自己説明しない群に分けられました。
黄疸と胸痛の症例を学習し、1週間後に新しい症例へ取り組みました。
全体としては、自己説明による診断成績の有意な改善は確認されませんでした。
一方、追加分析では黄疸症例で改善がみられ、胸痛症例では確認されませんでした。
研究者らは、症例間で共通する病態生理学的な機序が存在するかどうかなどが関係する可能性を指摘しています。
なぜ?と考えれば何でも応用できるわけではありません。
自己説明は、複数の知識を貫く原理や因果関係を理解したいときに利用しやすい学習法と考える方が安全です。
想起練習と自己説明はどう使い分ける?
ここまで読むと、第2記事で扱った想起練習と何が違うのか疑問に感じるかもしれません。
両者は問いが違います。
| 確認したいこと | 主に使う学習 | 問いの例 |
|---|---|---|
| 知識を取り出せるか | 想起練習 | ACE阻害薬の代表的な副作用は? |
| 理由・因果関係を説明できるか | 自己説明 | なぜACE阻害薬で空咳が起きる? |
| 間違いを直せるか | フィードバック | 何を勘違いしていた? |
| 本当に分かっているか | メタ認知 | 根拠まで説明できる? |
つまり、
何だった?が想起練習。なぜそうなる?が自己説明。
です。
医学教育で両方を直接比較した研究
Larsenらの2013年研究では、1年次医学生47人が4週間にわたり、
- テスト+自己説明
- テストのみ
- 再学習+自己説明
- 再学習のみ
の学習を行い、6か月後の保持と臨床応用を比較しました。
繰り返しテストにも自己説明にも利益が確認されましたが、この研究では繰り返しテストの効果の方が大きい結果でした。
ただし、テスト+自己説明がテストだけより必ず優れていた、とまではこの研究から言えません。
したがって、想起練習と自己説明のどちらが上かを決めるのではなく、目的によって使い分けます。
初めて学ぶ内容ではいきなり自己説明しなくてよい
自己説明には、説明するための前提知識が必要です。
まったく知らない内容について、
なぜこの薬が効くのか自分で考えてみよう。
と求められても、正しい説明を作れないことがあります。
知識がほぼない初学者では模範例が有利だった小規模研究
Yipらの2026年研究では、眼科学について事前知識のない2年次医学生27人を対象に、模範例を使った学習と自己説明を中心とした学習が比較されました。
10日後の臨床推論では模範例を使った群が良い結果でしたが、40日後には群間差は確認されませんでした。
27人の小規模なpilot studyであり、この研究だけから初学者には自己説明が効かないと結論づけることはできません。
ただし、ほぼ知識のない段階では、専門家の考え方や模範例を先に見る方法にも意味があることを示す研究です。
初学なら、まず学ぶ。その後に説明する。
国家試験対策へ応用するなら、
- 教材・講義・模範解答で基本を学ぶ
- 内容を理解する
- なぜ?を自分で説明する
- 問題で使えるか確認する
という順番が使いやすいでしょう。
自己説明が他の推論法より常に優れているわけでもない
Al Rumayyanらの2018年研究では、2年次医学生が小グループで臨床症例を学習し、自己説明と仮説を複数立てながら考える方法が比較されました。
1週間後の類似症例では、仮説を立てながら考えた群が自己説明群よりわずかに良い結果でした。
これは小グループの臨床推論研究です。
国家試験の独学へそのまま一般化することはできませんが、自己説明が他の有効な考え方より常に優れているわけではないことを考える材料になります。
薬剤師国家試験向けなぜ?5問テンプレ
自己説明を実際に使おうとしても、何を説明すればよいのか分からないことがあります。
そこで、国家試験勉強で使いやすい問いを5つに整理します。
この5問自体が研究で最適だと確認されたものではありません。
自己説明研究で扱われている因果関係・原理との結び付けや、医学教育で具体的な問いを与えた研究を参考にした当サイト独自の実践テンプレートです。
| 問い | 確認すること |
|---|---|
| 1.なぜそうなる? | 原因と結果のつながり |
| 2.何が起点? | 作用点・原因・前提条件 |
| 3.その結果どうなる? | 次に生じる変化・症状・副作用・計算結果 |
| 4.何とつながる? | 既存知識・別科目・別の現象との関係 |
| 5.条件が変わるとどうなる? | 知識を別の条件へ使えるか |
薬理で使う例
例えばある薬の副作用を勉強するとき、
- なぜこの副作用が起きる?
- どの作用点が起点?
- 作用点を変えると生体で何が起きる?
- 適応や禁忌とどうつながる?
- 患者背景が変われば注意点は変わる?
と考えます。
病態で使う例
- なぜこの症状が出る?
- 最初に何が異常になる?
- その変化が次に何を起こす?
- 検査値とどうつながる?
- 病態が進行すると何が変わる?
計算問題で使う例
- なぜこの式を使う?
- 問題文のどの条件が式選択の起点?
- この操作で何を求めている?
- 単位は何と何をつないでいる?
- 条件が変われば式・計算手順も変わる?
自己説明は長く話すより短く因果関係をつなぐ
自己説明を取り入れるときに、毎回長い文章を書く必要はありません。
国家試験の学習量を考えると、一つの知識について何分も説明していると進まなくなります。
例えば、
作用点 → 変化 → 結果
を短く説明できれば十分なこともあります。
口頭で説明しても、矢印で書いても、簡単な図にしても構いません。
重要なのは、説明文を作ることではなく、知識同士の関係を自分で生成できるかです。
自己説明で避けたい5つの使い方
1.説明文そのものを丸暗記する
参考書に書かれた説明文をそのまま暗唱できても、自分で因果関係を組み立てられるとは限りません。
文章そのものではなく、どの知識とどの知識がつながっているかを確認します。
2.すべての知識を長々と説明する
すでに理解できている内容や、理由から導けない個別暗記まで毎回説明する必要はありません。
因果関係が曖昧な内容、少し条件が変わると解けない内容へ重点的に使います。
3.知らない内容を無理に推測する
前提知識がほとんどない場合は、まず教材や模範例で正しい知識を学びます。
誤った説明を自分で作ることが目的ではありません。
4.自己説明だけで復習を終える
説明できた後も、国家試験では必要なときに知識を取り出す必要があります。
自己説明だけでなく、問題演習・想起練習・時間を空けた復習を組み合わせます。
5.なぜ?を考えれば丸暗記が不要になると考える
薬学には、理由を理解しても最終的には覚える必要がある知識が多数あります。
自己説明は暗記をなくす方法ではありません。
丸暗記だけでは知識がつながりにくい部分へ、理由を追加する方法として使います。
よくある質問
- 自己説明とは、自分の言葉で説明できればよいのですか?
-
自分の言葉にすることだけが目的ではありません。なぜそうなるのか、どの原理とつながるのか、何が原因で何が結果なのかを説明することを重視します。知っている事実を長く並べるだけでは、自己説明の中心である因果関係や概念間の関係を十分に確認できない場合があります。
- 薬理はすべて作用機序から覚えれば丸暗記しなくてよくなりますか?
-
丸暗記が不要になるわけではありません。作用機序から理解できる内容は理由をつなげ、薬名、個別の適応、数値など理由だけで導けないものは想起練習や分散学習なども使って覚えます。
- まだ全然分からない範囲でも、まず自分で説明した方がいいですか?
-
前提知識がほとんどない場合は、まず教材・講義・模範解答などで基本を学ぶ方がよいでしょう。2026年の小規模医学教育研究でも、事前知識がない学生では模範例を使った学習が自己説明より短期的に良好だった結果があります。基本を理解した後に自己説明へ移る方法が使いやすいでしょう。
- 想起練習と自己説明はどちらを優先すればいいですか?
-
目的が異なります。何だったかを取り出すのが想起練習、なぜそうなるかを説明するのが自己説明です。医学教育の直接比較では繰り返しテストの効果の方が大きかった研究がありますが、自己説明にも利益が確認されています。どちらか一方だけにする必要はありません。
- 計算問題でも自己説明を使えますか?
-
使えます。特に解答例を見るときに、なぜこの式を使うのか、なぜこの単位へ変換するのか、どの条件ならこの手順が使えるのかを確認します。ただし、計算問題では模範解答や解法例から正しい手順を学ぶ工程も重要です。
- 自己説明を使えば薬剤師国家試験の点数は上がりますか?
-
今回確認した研究から、そのように直接断定することはできません。自己説明には一般学習研究や医学教育研究で利益が報告されていますが、薬剤師国家試験受験者を対象として自己説明による得点・合格率の向上を直接確認した研究ではありません。国家試験対策を支える学習方法の一つとして利用します。
まとめ|答えられたら次になぜ?を一度説明する
自己説明について、今回確認した研究から整理すると次のようになります。
- 自己説明は、因果関係や概念同士のつながりを自分で説明する学習
- 解答例を学ぶときに、手順と原理を結び付ける学習行動が研究されている
- 64研究をまとめたメタ分析では自己説明を促す介入に中程度の全体効果が報告されている
- 循環器系の文章理解でも自己説明を促した研究がある
- 医学教育では自己説明の利益が出た研究と出なかった研究の両方がある
- 自己説明の効果は題材や既有知識によって変わる可能性がある
- 知識がほとんどない初学者では模範例が短期的に有利だった小規模研究もある
- 自己説明が他の有効な推論方法より常に優れているわけではない
- 薬剤師国家試験受験者で自己説明の得点効果が直接確認されたわけではない
国家試験対策へ落とし込むなら、因果関係のある内容について、
思い出す → なぜそうなる?を説明する → 正答・解説で確認する
という流れが使えます。
一方、まだ知らない内容はまず学びます。
また、理由から導けない個別暗記まで、すべて自己説明で処理する必要はありません。
答えを覚えたら、因果関係のあるものだけ一度なぜ?まで確認する。
この程度から始める方が、国家試験の膨大な範囲にも取り入れやすいでしょう。
次の記事では、似た薬・疾患・概念をまとめて学ぶべきか、それとも混ぜて問題を解くべきかというインターリービングを取り上げます。
この記事で確認した主な学術論文
- Chi MTH, Bassok M, Lewis MW, Reimann P, Glaser R. Self-Explanations: How Students Study and Use Examples in Learning to Solve Problems. Cognitive Science. 1989;13(2):145-182. 論文ページ
- Chi MTH, de Leeuw N, Chiu MH, Lavancher C. Eliciting Self-Explanations Improves Understanding. Cognitive Science. 1994;18(3):439-477. 論文ページ
- Bisra K, Liu Q, Nesbit JC, Salimi F, Winne PH. Inducing Self-Explanation: a Meta-Analysis. Educational Psychology Review. 2018;30:703-725. 論文ページ
- Chamberland M, St-Onge C, Setrakian J, et al. The influence of medical students’ self-explanations on diagnostic performance. Medical Education. 2011;45(7):688-695. PubMed
- Chamberland M, Mamede S, St-Onge C, et al. Self-explanation in learning clinical reasoning: the added value of examples and prompts. Medical Education. 2015;49(2):193-202. PubMed
- Larsen DP, Butler AC, Roediger HL III. Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education. 2013;47(7):674-682. PubMed
- Peixoto JM, Mamede S, de Faria RMD, et al. The effect of self-explanation of pathophysiological mechanisms of diseases on medical students’ diagnostic performance. Advances in Health Sciences Education. 2017;22(5):1183-1197. PubMed
- Al Rumayyan A, Ahmed N, Al Subait R, et al. Teaching clinical reasoning through hypothetico-deduction is (slightly) better than self-explanation in tutorial groups: An experimental study. Perspectives on Medical Education. 2018;7(2):93-99. PubMed
- Yip CC, Thng ZX, Yang FP, et al. Cultivating Reasoning Through Example-Based Or Self-explanation-based Teaching (CREST)? Medical Science Educator. 2026;36:745-754. PubMed
自己説明の効果は、学習者の既有知識、学習内容、説明の促し方、比較する学習方法などによって変化します。本記事では、自己説明が有効だった研究だけでなく、有意な利益が確認されなかった研究や、他の学習方法が良好だった研究も含め、薬剤師国家試験へ応用できる範囲を整理しています。
